研究課題/領域番号 |
23792422
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
武居 真希 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (50547445)
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キーワード | 顎関節形成不全 / 成長期 / 非生理的負荷 / カテプシンK / MMP-13 |
研究概要 |
本研究は、成長期における咀嚼機能の低下に伴う顎関節の形成不全が顎関節OAの発症および進行を誘発するが成長期に顎関節の形成不全を改善するとそれらが軽減されるという仮説のもと、成長期における顎関節形成不全改善がOA発症および進行に及ぼす影響を知ることを目的とした。顎関節形成不全をもたらす因子として成長期における軟食、顎関節OAの発症因子として非生理的負荷を想定し、実験を行った。 平成23年度では、液状飼料飼育による顎関節形成不全の評価、さらに非生理的負荷を加えた場合の顎関節を、マイクロCTを用いて形態学的に比較検討した。平成24年度では、前年度と同様の実験群(3週齢Wistar系雄性ラットを用い、6週間液状飼料にて飼育する群と通常の固形飼料で飼育する群との2群に分け、さらにそれらを9週齢の時点で非生理的負荷〈最大開口刺激3時間×5日間〉を加える群と無処置の群とに分けた、計4群【対照群、顎関節形成不全群、非生理的負荷付与群、顎関節形成不全+非生理的負荷付与群】)を作製し、Toluidine blue染色による下顎頭軟骨形態および厚径の変化、TRAP染色による軟骨下骨の破壊様相の観察を行った。 平成25年度では、24年度と同様の実験群4群を作製し、抗カテプシンK抗体および抗MMP-13抗体を用いた免疫組織化学染色を行った。 【結果】顎関節形成不全+非生理的負荷付与群において、軟骨下骨の骨梁構造に顕著な退行性変化が認められていた下顎頭中央部から後方部で、MMP-13陽性細胞数の有意な増加を認めた。また、他の群では認められない無細胞領域が限局して存在し、細胞レベルでのOA様変化が観察された。以上の結果から、成長期における咀嚼機能の低下に伴う顎関節の形成不全が顎関節OAの発症および進行を誘発することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度より引き続いて行っていたTRAP染色および抗カテプシンK抗体の染色結果のばらつきが大きく、統計学的評価を得られなかったので、研究全体の遅れにつながってしまった。再実験を現在検討中である。しかしながら、OA様変化を観察するのに最も適している抗MMP-13抗体による染色結果および統計学的評価を得ることが出来ただけでなく、無細胞領域を観察することが出来たため、本研究は飛躍的に前進したものと考える。 また、当初の研究計画では顎関節形成不全改善モデルを作製する予定であったが、液状飼料飼育による顎関節形成不全に非生理的負荷を加えた際の変化を観察した後に、顎関節形成不全改善モデルを作製することとした。非生理的負荷がOA様変化をもたらす因子として妥当であるかを評価する必要があったからである。そのため組織学的検討を優先させたが、これらは顎関節形成不全改善モデル作製後にも同様に行う実験条件・手技であるので、大幅な遅れとは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた形態学的および組織学的変化に統計学的評価を加えた研究結果をまとめ、学会発表、論文作成・投稿を行う予定である。 また、結果にばらつきのあったTRAP染色、抗カテプシンK抗体の染色の再実験を行い、OA様変化の詳細を明らかにする。 さらに、顎関節形成不全改善モデルを作製し、これまでと同様の形態学的および組織学的検討を進める。その後、ELISA法による定量評価に移る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
一つ目の理由としては動物舎使用が出来なくなったことにより再実験が必要になった場合、次年度に行う可能性があったことがあげられます。二つ目の理由としては現在データが出ている内容で論文作成している状況で投稿および学会発表が次年度に行う予定であったためです。以上の理由より次年度に繰り越させていただきました。 前年度で得られなかったTRAP染色、抗カテプシンK抗体の染色の再実験を行うため、今年度は実験動物の飼育、組織学的検討、統計学的評価を予定している。そのため実験動物、2次抗体、染色の際に使用する試薬、備品、解析したデータや組織像の保存用HDDの購入を検討している。 また、今年度は最終年度であるため、これまでの研究結果の学会発表および論文投稿を予定しており、印刷費、投稿料に研究費を充てる。
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