本研究は、成長期における咀嚼機能の低下に伴う顎関節の形成不全が顎関節OAの発症および進行を誘発するが成長期に顎関節の形成不全を改善するとそれらが軽減されるという仮説のもと、成長期における顎関節形成不全改善がOA発症および進行に及ぼす影響を知ることを目的とした。顎関節形成不全をもたらす因子として成長期における軟食、顎関節OAの発症因子として下顎頭への非生理的負荷を想定し、実験を行った。 これまでに実験群(3週齢Wistar系雄性ラットを用い、6週間液状飼料にて飼育する群と通常の固形飼料で飼育する群との2群に分け、さらにそれらを9週齢の時点で非生理的負荷〈最大開口刺激3時間×5日間〉を加える群と無処置の群とに分けた、計4群【対照群、顎関節形成不全群、非生理的負荷付与群、顎関節形成不全+非生理的負荷付与群】)を作製してきた。その後マイクロCTを用いた形態学評価として下顎頭軟骨下骨の骨梁構造の観察を行い、組織学的評価としてToluidine blue染色による下顎頭軟骨形態および厚径の変化の観察を行った。また抗カテプシンK抗体および抗MMP-13抗体を用いた免疫組織化学染色を行った。平成26年度ではこれまでの研究成果を論文として発表に至った。 【結果】顎関節形成不全+非生理的負荷付与群において、軟骨下骨の骨梁構造に顕著な退行性変化が認められていた下顎頭中央部から後方部で、MMP-13陽性細胞率の有意な増加を認めた。カテプシンKにおいても同様の傾向を認めた。また、他の群では認められない無細胞領域が限局して存在し、OA様変化が観察された。以上より成長期における咀嚼機能の低下に伴う顎関節の形成不全が負荷に対する抵抗性の低下を誘発し、成長期における顎関節への適度な機械的刺激が正常な顎関節の成長や負荷に対する抵抗性の獲得に重要であることが示唆された。
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