摂食は、様々な栄養素を体内に取り込むための動物にとって必要不可欠な行為である。また嚥下は、食物を口腔から咽頭、食道を経て胃に送り込む一連の動作で、胎生期から既に備わっている摂食の必須課程である。これらの調整は、末梢からの情報を介して最終的に脳で行われている。摂食と嚥下の調節システムにかかわる研究の中で、摂食調節にかかわるペプチドと嚥下調節との関連性については意外なことにあまり調べられていない。本研究では、両者の関連性について発達期を通して調べることで、摂食調整システムと嚥下との関連性を解明することを目的とした。 満腹感を感じる要因の一つに血中グルコースの増加があり、これによりインスリンレベルが上昇するとインスリンは摂食を終了させる飽食因子として働く。一方、甘味刺激は血糖値の上昇前に一過性にインスリン分泌の起きること(インスリンの頭相分泌)が知られている。本研究課題と関連して、本年度は味覚刺激が嚥下にどのような影響を及ぼすかについての検索を進めてきた。咽頭への味溶液注入による嚥下の変調を比較したところ、酸味溶液(塩酸、クエン酸、酢酸)注入時の嚥下間隔時間は水、塩味溶液および甘味溶液注入時と比較して有意に短縮した。結果より、咽頭への味覚刺激の効果は味質により異なり、酸味溶液は促進効果を有する可能性が示唆された。
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