これまでに,健常な日本人から採取したデンタルプラーク検体におけるアモキシシリンに対して耐性を示す口腔レンサ球菌種の存在を検討し,その分布頻度が約 5 %であることを明らかにした.本研究では,実際に心疾患を有する感染性心内膜炎発症高リスク患者から採取したデンタルプラーク検体におけるアモキシシリンに対して耐性を示す口腔レンサ球菌種の存在を検討した.その結果,約 20 %の検体においてアモキシシリンに対して耐性を示す口腔レンサ球菌株が分離され,健常な対象よりも感染性心内膜炎発症高リスク患者の方が有意に高い頻度で保有しているということが示された.次に,これらの菌株からゲノム DNA を抽出後 16S rRNA 配列を決定し,菌種を特定したところ,Streptococcus mitis ,Streptococcus oralis ,Streptococcus salivarius 等であることが分かり,いずれも感染性心内膜炎の起炎菌となり得る菌種であることが明らかとなった. さらに,これらの菌株における他の抗菌薬に対する最小発育阻止濃度を決定したところ,健常な日本人における対象において分離されたアモキシシリンに対して耐性を示す口腔レンサ球菌種と同様に,他の抗菌薬に対しても耐性を示す傾向があることが明らかとなった.今後,これらの菌株に対して有効な抗菌薬を検討するとともに,感染性心内膜炎発症高リスク患者における大規模な調査が必要であると考えられる.
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