研究課題/領域番号 |
23792429
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
丹根 由起 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50526241)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 変形性顎関節症 / NSAID / 薬学 |
研究概要 |
今年度は、まず第一に剪断応力が下顎頭軟骨に及ぼす影響についてCOX-2およびIL-1βの発現を組織学的および遺伝子学的に検討を行った。今回、我々はブタの頭部全体を振り子型摩擦試験機に固定し、さらにモーターを接続して持続的に剪断力を負荷できるように装置を改良した。14kgの荷重下で16時間負荷をかけたところ、繊維層と軟骨層の間にIL-1βの発現の亢進が認められた。さらに、軟骨層においてCOX-2の発現亢進が認められた。次に、負荷後に下顎頭軟骨層より軟骨細胞を抽出し、COX-2の遺伝子発現について検討したところ、コントロール群と比較して有意に増加していることが明らかとなった。次に、軟骨基質代謝に対する機械的伸張刺激の影響について明らかにするために、ブタ下顎頭軟骨層より軟骨細胞を採取し、培養細胞伸展機を用いて10%機械的伸張刺激を負荷し、COX-2、MMP、PGE2発現について検討した。その結果、負荷開始1時間よりCOX-2遺伝子発現は有意に増加し、負荷開始6時間経過後もコントロール群と比較して有意に高い値を示した。MMP-1,3,9の遺伝子発現は、いずれも負荷開始6時間後に有意に増加を認めた。培養上清中のPGE2レベルは非負荷群と比較して高い値を示したものの、有意差は認めなかった。さらに、下顎頭由来培養軟骨細胞に対する機械的伸張刺激によるCOX-2の誘導および軟骨基質代謝に対するCOX-2選択的阻害剤(セレコキシブ)の影響について検討を行った。機械的伸張刺激により増加したMMP-1,3遺伝子発現はセレコキシブ添加により有意に抑制されることが明らかとなった。その一方、MMP-13遺伝子発現は、セレコキシブ添加により有意に増加し、他のMMPと異なる反応を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、我々の研究グループにおいて行われた過去の研究と同様の実験条件で、機械的伸張刺激を負荷する予定で計画を進めていたが、初代軟骨細胞は接着が弱く、早期にプレートから剥離することが続いた。そこで、今回我々は、機械的伸張刺激を負荷する条件を再度検討したため、当初の計画よりやや遅れてしまった。さらに、組織学的検討においては、ブタの頭部を振り子型摩擦試験機に装着し、モーターを使用した自動振り子型摩擦試験機を考案することができたが、そのことに時間を要することになった。
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今後の研究の推進方策 |
組織学的実験では、自動振り子型摩擦試験機を使用し、せん断応力を長時間かけた際の軟骨細胞層における炎症性サイトカインの遺伝子発現について検討するとともに、組織学的検討につぃては個体数を増やして検討を続ける。in vitro実験系では、下顎頭由来培養軟骨細胞に対する機械的伸張刺激によるCOX-2の誘導および軟骨基質代謝に対するCOX-2選択的阻害剤(セレコキシブ)およびNSAIDs(インドメタシン、アンフェナックナトリウム)の影響について検討する。セレコキシブ添加によるMMP遺伝子発現に対する影響についてはすでに明らかになったので、今後は基質産生に対する影響についても検討を行う。さらに、in vivo実験系では、6週齢Wistar系雄性ラットを用い、一日一時間30mmの強制開口を20日間行い、TMJ-OAモデルを作製する。実験群では、10日間負荷を加えた後、セレコキシブ(0.1~3mg/kg) , インドメタシン(0.01~1 mg/kg ), アンフェナックナトリウム(0.01~1 mg/kg)を10日間1日2回経口投与し、非投与群および無処置群と比較検討を行う。20日間の実験終了後、ラット頭部を摘出し、顎関節矢状面の組織切片を作製し、H-E染色およびトルイジンブルー染色を行い、病理組織学的変化を観察する。さらに、COX-2およびMMPs (MMP-1, 3, 9, 13)の発現について免疫組織化学染色により検討行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究においては、現有機器を用いる。研究費は、Western blot法およびreal time PCR法を行うための消耗品に使用する予定である。さらに、培養細胞伸展機には専用プレートが必要なため、購入する予定である。また、本年度は動物実験を行う計画であるため、実験動物や飼料の購入も考えている。さらに、英語論文発表の際の投稿料や、学会発表に研究費を使用する予定である。
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