研究課題
食事の自立には「上肢機能」と「口腔機能」の二つの条件が必要となる。「上肢機能」は、手指を使って捕食しやすい位置に食物を運ぶ運動であり、機能が発揮されるためには、姿勢の保持や制御も必要となる複雑で繊細な統合機能であるが、解明が遅れている。そこで本研究では、小児の一連の食事動作における上肢や体幹と口の動態を解析し、協調的運動の関連性、ならびにその発達過程を解明するため、先行的に成人の食事動作について解析を行った。健康な成人を対象とし、サイズの異なるりんごを口腔内に取り込む際の開口量と、開口に伴う体幹、頭部の動きに関する研究を行った。食事動作計測には、3次元動作計測装置VICON(インターリハ社製)を用い、被験者に貼付した反射マーカーの動きを高精度カメラで撮影することにより、その運動データを3次元座標値として定量的に取得した。その結果、健康な成人においては、口腔内に取り込む食物の大きさが大きくなると、開口量が増加し、体全体はより前下方へ前傾するものの、頭部は後屈させることで床に対する頭の傾きはほぼ一定を保つことが明確になった。また、補食時の開口量、開口時の上体の傾斜角度、頭部の後屈角度を定量的に取得することができた。さらに性差を調べたところ、男性に対し女性は、食品が大きくなると、最大開口時の頭部、肩部が下方よりも前方移動する傾向があり、さらに頭部の前方傾斜角度が有意に小さく、肩部に対する頭部の角度が大きかった。このことから、捕食の際、女性の方が前かがみになることなく、安定した頭位を維持している可能性が示唆された。本結果を基に、今後は食事動作の違いに影響を与える因子や、小児を対象として、男女の特徴が現れる時期に関する、より詳細な検討を行う予定である。また、本研究で得られた結果は、食事動作の発達完了の基準値として利用できる。
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