まずはiPS細胞樹立時に必要とされるfeeder細胞について、複数の異なる薬物耐性を持つfeeder細胞を樹立した。2種類の薬剤耐性遺伝子を持つプラスミドを作成し、SHB細胞、SPB細胞、SNB細胞を樹立した。薬剤選別にて、いずれの細胞もSTO細胞とほぼ同じ細胞形態をしており、18継代以上の長期間培養維持が可能であった。また、樹立細胞上に播種されたマウスES細胞については、形態学的には変化は認められず、良好な継代維持が可能であった。次に、口腔組織由来細胞の初代培養では、特に細菌類が培養系にコンタミする場合が多いことから、歯髄細胞の初代培養時のコンタミについて検討した。STO細胞と共培養すると、初代培養系のコンタミの可能性を減少させることが可能であった。次に歯髄細胞を用いて4因子にて乳歯由来iPS細胞の樹立に成功した。さらに歯髄幹細胞特異的プロモーターを持つプラスミドを乳歯由来iPS細胞に遺伝子導入し、組み換えiPS細胞を樹立した。このiPS細胞をヌードマウス皮下に移植し、奇形腫を作製し、それを初代培養に移した。しかしながら、neomycinを含む培地にて培養後、歯髄幹細胞を選別したが、目的の細胞を取得することができなかった。原因としては、プロモーターの発現、奇形腫でのinvivo分化誘導の不確実性が考えられたため、遺伝子導入法の再検討とスキャフォルドなどでの分化の方向付けができる材料を用いるなどの検討を今後行う予定である。
|