研究課題/領域番号 |
23792440
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
黒石 加代子(中尾加代子) 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (60468303)
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キーワード | メカニカルストレス / オステオアクチビン / 歯根膜線維芽細胞 / PCR法 |
研究概要 |
オステオアクチビン(OA)は、骨硬化症ラットにおいて骨形成性因子として同定され、骨芽細胞分化において重要な役割を担う。OAは、膜貫通型タンパクであり、細胞内・外ドメインを持ち、細胞外ドメインのシェディングにより活性化される。我々は、実験的歯の移動時の骨代謝におけるOAの役割を解明するため、歯周組織におけるOAの分布と、伸展刺激を加えたヒト歯根膜線維芽細胞(ヒトPDL細胞)におけるその発現と放出について調べた。in vivoでは、ラット臼歯にWaldo法を用い4日間負荷を与え、深麻酔下で還流固定し上顎骨を摘出。凍結切片を作製し、歯周組織におけるOAの分布を免疫染色にて調べた。in vitroでは、伸展刺激を24時間ヒトPDL細胞に与えた(伸展群、4%伸展率、5回/分)。ヒトPDL細胞におけるOA発現は、RT-PCR法とReal-time PCR法で調べた。OA細胞外ドメインのシェディングを起こす酵素としてADAM10、12、17の発現についてReal-time PCR法で調べた。OA細胞外ドメインの培地中への放出は、ELISA法で検出した。 ラット歯周組織ではOA免疫陽性骨芽細胞およびPDL細胞が伸展側で観察された。 In vitroにおいて、OAはヒトPDL細胞で発現しており、伸展刺激でその発現量は変化しなかった。また、伸展刺激でADAM10発現は変化しなかったが、ADAM12および17発現が増加した。伸展群で、培地中のOA量はコントロール群より増加した。 OAは、骨芽細胞およびPDL細胞に分布していた。伸展刺激はPDL細胞からOA細胞外ドメインのシェディングを促進し、細胞外ドメインの放出を増加させた。これらより、OAは矯正的歯の移動時における歯周組織の伸展側の骨形成を刺激していること、細胞外ドメインのシェディングを起こす酵素として、ADAM12、17の関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オステオアクチビン(OA)の発現に対するメカニカルストレスの影響を調べることに対し、ヒト歯根膜線維芽細胞における伸展刺激の影響をRT-RCR法およびReal-time PCR法で調べた。その結果、OAの遺伝子発現に変化がないことが分かり、この点について解明ができたと思われる。 OAの活性化のメカニズムを調べることに対し、OAは膜貫通型タンパクで、細胞内・外ドメインを持ち、細胞外ドメインのシェディングにより活性化されることがもともと分かっていることから、ELISA法でヒト歯根膜線維芽細胞から放出されるOA細胞外ドメインの量を測定した。その結果、伸展刺激によりヒト歯根膜線維芽細胞から放出されるOA細胞外ドメインの量は増加することが分かった。さらに、OA細胞外ドメインのシェディングを起こすプロテアーゼの種類として、ADAM10、12および17のmRNA発現についてReal-time PCR法で調べた。その結果、伸展刺激によってADAM10遺伝子発現は変化しなかったが、ADAM12および17の遺伝子発現が増加した。また、ADAMの阻害薬として、CB-12181を培地に添加した場合、伸展刺激で増加したOA細胞外ドメイン量が、コントロールレベルまでに減少することが分かった。このことより、OA細胞外ドメインのシェディングを起こすプロテアーゼの種類として、ADAM12および17の関与の可能性が考えられ、順調にOAの活性化のメカニズムについての解明が進んでいると思われる。 歯周組織におけるオステオアクチビンの働きの解明として、ラット歯周組織でのOAの染色を行った。その結果、OA免疫陽性骨芽細胞およびPDL細胞が伸展側で観察された。このことから、歯周組織での伸展側での骨形成に関与している可能性を示唆され、さらに詳しく調べる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
最近の研究で、ADAMの阻害薬としてCB-12181を用いた実験を行い、伸展刺激によって増加したヒト歯根膜線維芽細胞から放出されるOA細胞外ドメイン量が、添加したCB-12181によって、コントロールレベルまで減少することが分かった(ELISA法)。伸展刺激を加えたときに、ADAM12および17の遺伝子発現量が増加することが確認されたことと併せて考慮すると、OA細胞外ドメインのシェディングには、ADAMが関与していることが示唆された。今後は、広域の阻害薬ではなく、ADAM12あるいはADAM17に対する特異的な阻害薬を用いた実験で同様の結果を得られるか検証したい。 また、オステオアクチビンの別名は、human HGFIN(hematopoietic growth factor inducible neurokininn-1 type)が示すように、NK1-Rの発現誘導能をもつことは明らかにされているが、実際、骨芽細胞、破骨細胞、歯根膜線維芽細胞におけるNK1-Rの発現に対するOAの影響については明らかではない。培養骨芽細胞、破骨細胞、歯根膜線維芽細胞を用い、NK1-Rの発現について、免疫染色、RT-PCR法およびReal-time PCR法を用いて調べる必要がある。 さらに、これまで歯根膜線維芽細胞にフォーカスをあてて研究を進めてきたが、メカニカルストレス(伸展刺激)を付与した場合の骨芽細胞での、OAの発現、OA細胞外ドメインの放出量についても、RT-PCR法あるいはReal-time PCR法、ELISA法を用いて調べる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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