研究課題/領域番号 |
23792442
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
倉重 圭史 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (30453278)
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キーワード | マラッセ上皮遺残細胞 |
研究概要 |
平成24年では、マラッセ上皮遺残細胞は歯周組織内において増殖傾向を示さないことから上皮塊として残存するため休眠状態にあるといわれている。そのためマラッセ上皮遺残細胞をoutgrowthさせた。その後、培養口腔上皮と比較したところ、マラッセ上皮遺残細胞が有意な増殖能が示された。 マラッセ上皮遺残細胞の多分化能に関して、組織幹細胞マーカーであるNanog,Stat3およびTertの発現をRT-PCRにて観察したところ、口腔上皮に比較し強い発現を認めた。更に、免疫組織染色においても分化傾向をみるCK10/13およびCK14では、口腔上皮のみ発現を認めるが、マラッセ上皮遺残では、発現を認めなかった。また、未分化細胞マーカーであるCK19でマラッセ上皮遺残は陽性像を呈した。しかし、歯原性上皮由来細胞で、エナメル芽細胞に分化することが可能であるSF-2(東北大学小児歯科学分野からの供与)ではCK-19は、局在を示さなかった。 マラッセ上皮遺残細胞とMC3T3-E1、口腔上皮細胞とMC3T3-E1をBD Matrigel invasion chamberを使用し50μg/mlアスコルビン酸、10mMβ―グリセロフォスフェート含有MEMである石灰化培地で共培養を行った。その後、アリザリンレッドによる染色を行った結果、10、20、30日において、マラッセ上皮遺残細胞がMC3T3-E1の石灰化を抑制していることが示唆された。 以上のことから、マラッセ上皮遺残は幹細胞特性を持つことが示唆された。しかし、歯原性上皮由来幹細胞であるSF-2ではCK19の局在は認めなったことから、マラッセ上皮遺残細胞が特異的性質を持つ事が考えられた。また、マラッセ上皮遺残細胞は石灰化に抑制的に働くため、歯槽骨内においてアンキローシスの抑制に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マラッセ上皮細胞による歯牙の再生を予定していたが、培養細胞においてMC3T3-E1との共培養により、石灰化を抑制する結果が導かれた。今年度は、生体に移植して行う予定であるため、おおむね順調に進展している
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今後の研究の推進方策 |
繰り越し金が、3,323円あるが研究試薬購入には足りないため繰り越すこととした。そのため次年度の実験試薬に使用する予定である。平成24年度の結果から、マラッセ上皮遺残細胞は未分化の細胞であり、幹細胞のマーカーの発現を認め、特異的な性質を持っている事が明らかになった。しかし、歯牙の再生において重要な石灰化では、抑制に働くことが示唆された。そのため、動物実験において移植実験を行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物であるマウス(Balb/c)、移植するための細胞培養関連(培養培地、増殖測定kit等)、形成物の形態を確認するための免疫組織染色関連(抗体、スライド等)を購入する予定である。
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