研究課題
生後、特に離乳期以降の数週間は咀嚼機能の獲得に極めて重要な時期である。加えて、この時期は急激な脳神経発達が起こる。近年、食生活の軟食化が問題視されており、現代人は咀嚼回数が著しく減少していると云われている。また、咀嚼回数の減少は、顎の発育低下、肥満や痴呆などとの関連性があると指摘されている。一方で、軟食が脳機能にどのような影響を与えているかについて記憶や海馬等に関する研究は散見される(Occlusion and brain function: mastication as a prevention of cognitive dysfunction. Ono Y. J oral Rehabil. 2010.37(8): 624-40)が、それ以外の脳機能に関しては、ほとんど報告がない。そこで我々は、精神疾患と成長発育期の軟食との関連に着目し、本研究においてはマウスの行動解析による生理学的評価、海馬におけるニューロジェネシスの評価、海馬におけるBDNF染色による神経細胞の観察、遺伝子発現パターン( BDNF、TrkB、Akt1)変化の評価を行い、検討した。その結果、硬食群に比べ、軟食群において有意に行動試験(プレパルス抑制試験)の異常を認め、海馬の神経新生の抑制、神経細数の有意な低下、遺伝子発現パターン( BDNF、Akt1)の有意な低下が認められた。我々の研究が、現代人の食生活および食を支えている歯科分野に関しても大きな影響を与えることができると考えている。
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Journal of Neuroscience
巻: 263 ページ: 257-263
10.1016/j.neuroscience.2013.12.065