研究概要 |
本研究は下顎角の大きさを規定する遺伝子が存在する染色体領域について検討し,さらにコンソミックマウスを用いて,その染色体が下顎角の大きさにどのような影響を与えているかを明確にすることを目的として行っている。まず,下顎角の大きさが異なる2系統の近交系マウス(下顎角の角度の大きいC57BL/6系統および角度の小さいC3H系統マウス)を交配し,F1マウスを得て,さらにF1マウス同士を交配させF2マウス30匹を得た。これらマウスの下顎骨を3か月齢にて摘出し,下顎角の大きさを測定した結果(85度~99度)に分布した。またこれらマウスのDNAを腎臓より抽出し,第1~19番染色体それぞれにC57BL/6系統およびC3H系統間で多型のあるDNAマーカーを設定し,PCR-電気泳動法にて各F2マウスの遺伝子型を分析している。現時点においてD13Mit76プライマーを用い,PCRで増幅し遺伝子型の判定をしたところ,下顎角の角度が小さいマウスはC3Hホモ型およびヘテロ型を示したのに対し,角度が大きいマウスは1匹を除いてB6ホモ型およびヘテロ型を示した。このことから,このマーカーの近傍に下顎角の大きさを規定する遺伝 子が存在する可能性が示唆された。次に,B6‐Chr13MSMコンソミックマウスの下顎角の大きさを3か月齢にて測定し た結果,C57BL/6系統よりも小さかったことから,13番染色体が下顎角の大きさの規定に関わっている可能性が示唆された。一部研究計画を変更しラットの上顎臼歯を抜歯し粉末飼料にて飼育を行い,下顎角を開大させ,次世代以降にどう影響を与えるかについて検討したところ,1~3世代に比較し4世代でさらに開大することが示唆された。下顎角の大きさと遺伝要因との関連性が少しずつ解明されており,小児歯科臨床においても,顎顔面領域の成長予測に応用することが期待され意義があると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は下顎角の大きさを規定する遺伝子が存在する染色体領域について検討し,さらにコンソミックマウスを用いて,その染色体 が下顎角の大きさにどのような影響を与えているかを明確にすることを目的として行っている。しかしながらコンソミックマウスの交配に時間を要するため,その対応策として研究計画を一部変更し,wistar系ラットを用いて上顎臼歯を5週齢にて抜歯し粉末飼料にて20週齢まで飼育することにより下顎角を開大させ,これが次世代以降にどのように影響していくのかについても検討している。また,マイクロCTを用いた下顎角の経時的変化の検討や骨形態計測も行っている。
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