研究課題/領域番号 |
23792452
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
岩崎 てるみ 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (60515609)
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キーワード | 唾液 / フッ化物 / 幼児 / フローインジェクション分析法 |
研究概要 |
平成24年度も23年度から引き続き、唾液中フッ化物(F)の動態を明らかにする目的で、さらに実験に使用する無機イオンの種類を増やし、低濃度Fと人工唾液中におけるタンパク質、カルシウム、ナトリウムおよびカリウムの関連性を検討した。溶液中遊離型Fイオン濃度の比較検討には、幼児唾液中遊離型Fイオン濃度と低濃度F添加後の幼児唾液中遊離型Fイオン濃度(岩崎てるみ,内川喜盛 他:フローインジェクション法による幼児唾液中フッ素イオン濃度の測定,小児歯誌,47:760-766,2009.)の結果を使用した。 そこで本年度は、臨床における幼児に対するさらに安全で効果的なFの応用法を確立するための基礎的研究として、平成23年度と同様、研究計画より、「添加Fの減少に関係する唾液中成分の存在を明らかにし、唾液中遊離型Fイオン濃度の変動理由を明確にすること」についてさらに詳細に検討し、日本小児歯科学会にて発表を行った。研究の結果、溶液中におけるFイオンとの結合において、イオン溶液,特にカルシウムイオン溶液にタンパク質が加わることで,遊離型Fイオン濃度が減少することが示唆された。しかし、イオン溶液のみでは、測定値にばらつきがあり,有意差は認められなかったことから、今後、試料数を増やし詳細に測定する必要があると思われた。 今後、添加F唾液中動態の減少理由を明確にすることで、齲蝕予防に効果的なFイオン濃度を口腔内で維持し続けるために、本当に必要とされるF量、F製剤量を明らかにすることが可能になり、今よりもさらに効果的なFの応用法が確立されると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
幼児の唾液採取については、定期的に保育園にて園児の唾液採取を継続しているため、実験の環境は整っている。平成23年度、平成24年度と引き続き、唾液中成分のタンパク質と様々な無機イオンとの関連について検討を行っている。添加Fと口腔内齲蝕原性細菌との関連については、今後行っていく必要があると考えている。よっておおむね順調に実験は進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
試料である幼児の唾液採取については、施設の協力を得ているため、試料採取の環境はすでに整っており問題はない。しかし、唾液中成分は非常に複雑であるため、実際の唾液を使用しての添加Fの減少を正確に検討することは現段階では困難であると考えている。平成23年度と同様に、唾液中遊離型Fイオン濃度の動態を明らかにするためには、測定値に影響を与えると考えられる成分を除外した人工唾液を用いて、個々の唾液中成分について唾液中に添加した低濃度Fとの関連性を検討する必要があると考えている。 使用するフローインジェクション分析装置に関しては、試料は超低濃度のFイオンであるため、常に装置の安定性と再現性を確認し、維持することが正確な実験結果を導くために重要であると考えている。 研究より得られた結果に関しては、今年度は、論文の作成と投稿を行う。 近い将来の目標は、実際に臨床応用可能、且つ、より安全で効果的なFの使用方法やF製剤の開発につながる知見を得ることとし、平成25年度は研究を継続する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に引き続き、調査開始1年後の試料採取と測定を行う。同時に、人工唾液中における低濃度Fイオンの動態も引き続き観察し検討する。さらに、現在臨床で使用されているF製剤中Fの唾液中動態についても不明な点が多く、実際にF製剤を使用後に、Fイオン濃度が唾液中でどのように変動しているかについても適切、安全で効果的なF使用量を検討する上で重要であることが実験期間中に明らかになってきたため、さらに検討する必要があると考えている。 1.幼児唾液を用いた研究:1)唾液中に添加したFと齲蝕原性細菌との関連性について。2)唾液中に添加したF製剤中のFイオン濃度の動態について。 2.人工唾液を用いた研究:人工唾液中における低濃度Fイオン濃度の動態の検討 3.結果の集計と解析 4.学会誌への論文投稿 また、現在までの研究はおおむね順調であると考えているが、平成24年度に行われなかったものもある。齲蝕原性細菌と唾液中Fイオン濃度との関連性の検討、海外での学会発表(IADRなど)と論文投稿が行われなかった。そのために、当初予定されていた当該年度の使用金額よりも実際は少なくなった。それらに関しては、本年度に行う予定であるため、計画的な研究費の使用が必要となる。さらに、実験期間を通じて、フローインジェクション分析装置の再現性、安定性が実験の結果を最も左右する因子となることがより明確になったため、装置の整備に研究費が必要となる予定である。
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