超微量フッ素(F)イオン濃度測定が可能なフローインジェクション分析装置を用いて、幼児唾液中Fイオン濃度を正確に測定し、長期間にわたる幼児口腔内のFイオン濃度の変動を詳細に観察することを研究ベースとし、さらに、唾液中に適用したフッ化物、または口腔衛生習慣が幼児口腔内に与える影響について今年度も継続して研究を行った。フッ化物は、齲蝕予防やエナメル質初期脱灰病変の再石灰化に有効であり、歯科医院におけるプロフェッショナルケアと家庭で行うホームケアの両面から、積極的なF製剤使用が望まれるが、未だ低年齢児のフッ化物の安全で効果的な使用に関するガイドラインおよびエビデンスは認められない。唾液中Fイオン濃度は、個人差が見られることからも、日常のフッ化物製剤使用状況の調査も行い口腔衛生習慣と唾液中Fイオン濃度との関係も検討すべきであると考えられた。そこで研究者は最終年度に、日常小児歯科診療に寄与できる結果として、上記研究成果を、IADR2015(国際歯科研究学会2015 ボストン・アメリカ)で口頭発表した。その結果、幼児唾液中Fイオン濃度と、特に仕上げ磨きとの関連性および歯磨剤の量や使用頻度との関連など諸外国との比較を行うことができ、さらなる研究につなげる知見を得ることが出来た。今後は、適用したF製剤が幼児唾液に与える影響と、歯の再石灰化に与える影響についての両面から同時に研究を行い、さらに研究を発展させる予定である。また本研究の内容は、現在、英語論文でジャーナルに投稿中である。
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