研究課題/領域番号 |
23792454
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
船山 ひろみ 鶴見大学, 歯学部, 助教 (00359530)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ビスフォスフォネート / マウスモデル / イオントフォレシス / 顎骨壊死 |
研究概要 |
骨吸収抑制薬bisphosphonate(BP)は,その強い骨吸収抑制作用により骨吸収亢進を伴う疾患に広く応用されている.BPsが急性の発熱や消化管傷害などの炎症性副作用を持つことは以前より知られており,経口服用の際にも副作用に配慮した細かい指示がある.それにも関わらず消化器の不調を訴え治療を断念せざるを得ない患者も多い.今回、申請者がこれまで行ってきた副作用の機序解明と治療・予防を目的とした研究をもとに,イオン導入法(イオントフォレシス: IOP)技術を応用し,副作用を軽減する,より安全で簡便な薬剤担持型電極材料を用いたBPs製剤の経皮的な薬剤送達システムの開発を試みた.6週齢の雄性BALB/cマウスの耳介へ試作薬剤担持型電極を用いた実験を行った.使用した通電装置は,Iomed社製phoresorIIAuto.脳波測定用コロディオン電極を自作のアダプターにてマウス耳介に固定し,IOPに適したBP溶液(イオン化,濃度等.今回使用したBPは,骨吸収抑制作用が最強のzoledronate),通電条件の検討を行った.耳介の炎症・壊死反応について経時的に観察し,経皮的に投与されたBPの全身的骨吸収抑制作用についてはIOP投与3週後に脛骨を摘出し,BP-band形成(成長期マウスへBPを1回投与すると脛骨骨端部にX線低透過帯が発現する.BP-bandと呼称し,その強度は投与したそれぞれのBPの用量に依存する)を指標に検討した.BPのIOPによる経皮的な投与によりBP-band形成が認められた.BP-band形成量はIOPの通電量,通電時間,BPの濃度に比例して増加したが,耳介の炎症・壊死反応の頻度も増加した.今後は,効果的な全身的骨吸収抑制作用を発揮し,炎症・壊死反応が起こらない条件(抗炎症作用のある薬剤との併用など)を模索し,経粘膜的な投与も検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BPsの投与には, これまで点滴などの静脈投与と経口服用のみが用いられてきた.経皮・経粘膜投与はこれまでに無い発想であり,今回,イオン導入法(イオントフォレシス: IOP)技術を用いて経皮的なBPの全身投与に成功したことの意義は大きい.様々な条件設定の検討が必要であったが,その中でIOPの通電量,通電時間,BPの濃度依存的な関係性も見いだした.今後は,申請者らがマウス耳介モデルでこれまで得た皮膚の炎症・壊死作用に関する多くの知見をもとに,様々なIOP投与の実験が可能であり,順調な研究の進展が予想される.
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今後の研究の推進方策 |
1)IOPを用いたマウス耳介へのBPの送達の評価:薬剤浸透についてマイクロダイアリシスプローブにて経時的に回収することにより浸透量を測定する.また耳介の炎症・壊死反応について経時的に観察し,耳介組織内炎症性サイトカインの動向を探り,免疫組織学的検討を行うことにより,顎骨壊死の機序解明を目指す.経皮的に投与されたBPの全身的骨吸収抑制作用についてはBP-bandを指標に検討する.2)IOPを用いた経粘膜でのBPの送達: ポリアニオン性の水溶性多糖類(アルギン酸)を用いたIOP 用電極組成物を用いた経粘膜での実験も検討する.3)IOPでの窒素を含むBP(以後NBPと略)とnon-NBPの併用投与: 顎骨壊死はNBPにより発症し,骨吸収抑制作用が最強のzoledronateによる発症頻度が最も高い.一方,窒素を含まないnon-NBPによる確かな発症例は無い.IOPによる経皮・経粘膜投与においても,NBPsは炎症・壊死作用を誘導する可能性が高い.また,Non-NBPをNBPと併用投与すると炎症性の副作用が抑制される結果を申請者らの独自の研究から得ている.これまでのマウス耳介での実験データをもとに,最良のNBPsとnon-NBPの組み合わせを検討する.また,炎症・壊死を抑制し,骨吸収抑制作用を発揮できる用量を模索する.
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次年度の研究費の使用計画 |
プラスチック器機類(使い捨てプラスチック器具類),試薬はもとより,ELISAキットや免疫染色, 遺伝子解析等が主たる経費となる事が予想される.主な実験はマウスを用いるため実験動物の購入や,動物実験補助者への謝金を予定している.また,次年度は最終年度であるため,研究結果の解析・論文作成のために必要な機器・ソフト類の購入も必要と思われる.研究協力者との研究打ち合わせを適宜実施する予定であり,研究成果を発表するための旅費も想定している.
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