代謝性骨疾患ならびに、歯科矯正学分野における歯の移動に伴う骨改造現象においてどのようなメカニズムにより骨組織が変化するのか、破骨細胞前駆細胞の分化機構を明らかにすることで解明することを目的とした。以前我々は生体内における破骨細胞前駆細胞の局在について解析した。その結果、生体内には破骨細胞分化を決定づけられた細胞が骨芽細胞と近接して存在することを明らかにした(J Cell Biol 2009)。さらに我々が解析した破骨細胞前駆細胞はRANK陽性細胞であり、骨髄から血流を介して骨吸収部位において破骨細胞へ分化することを明らかにした(J Bone Miner Res 2011)。このRANK陽性細胞の挙動を、破骨細胞形成不全マウスを用いて解析し、骨における破骨細胞前駆細胞の分化機構の解明を行った。昨年度までの研究において、c-Fos欠損マウスの脛骨にはRANK陽性細胞は認められなかった。またc-Fos欠損マウスの骨組織におけるRANKの発現量はmRNA、タンパク質レベルでRANKL欠損マウスと比較し低レベルであった(第27回日本骨代謝学会)。これらのことから、破骨細胞前駆細胞の分化にはc-Fosが重要であり、c-FosによるRANKの発現上昇が破骨細胞分化に必須であると考えc-FosによるRANK発現上昇機構の解明を行った。野生型マクロファージ(M)に対するM-CSF刺激はc-FosとRANKの発現を上昇させたが、c-Fos欠損マウス由来MではM-CSFによるRANK発現上昇は認められなかった。c-Fos欠損マウス由来Mへのc-Fos過剰発現はRANKの発現を上昇させた。これらのことより破骨細胞前駆細胞においてc-FosはM-CSF/c-fmsシグナルの下流でRANKの発現上昇に必要であることが示唆された(Jornal of Cell Science 2012)。
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