本研究では、結合組織の修復、再生、リモデリングに深く関与している線維芽細胞、特にその能力の高い乳歯歯髄由来線維芽細胞において、炎症部位の組織破壊をもたらす種々のサイトカインやMMP、そして線維芽細胞より産生され抗炎症作用を持つアデノシンがどのように関連しているかについて解明し、歯髄炎に対する治療指針の可能性の範囲を拡大させるとともに、幹細胞として有用である歯髄細胞の保存に向けて再生医療への路を拓くことを目的とし研究を行った。 初年度は、LPSおよびアデノシンを乳歯歯髄由来線維芽細胞に単独処置した後、まず増殖率および生存率に対する影響について検討を行い、その結果、LPSおよびアデノシンが最も乳歯歯髄細胞に影響を及ぼす濃度について明らかにした。 次にLPSおよびアデノシンによって特異的に産生量が変動するサイトカインおよびメタルプロテアーゼの検討を行い、MMP2産生能に有意な変化がみられることを明らかにした。 次年度はLPSおよびアデノシン単独処置によって変化のあったMMP2産生について、そのメカニズムの解析をウエスタンブロッティングにより検討した。LPSおよびアデノシン刺激によるMMP2産生が、PI3-K阻害剤であるLY294002により抑制されたことより、MMP-2産生 はPI3-Kを介していることが明らかとなった。
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