In vitroで,ある種の炎症性サイトカインによってFOXP3+ 制御性T細胞(Treg)がIL-17+T細胞(Th17)にサブセット転換することが報告されるようになり,このメカニズムが様々な炎症性疾患に関与する可能性が考えられている。そこで我々はこのサブセット転換の過程で生じるIL-17A+FOXP3+T細胞に注目して歯周炎病態の解析を行った。 免疫組織学的解析より,Th17(IL-17A+FOX3-T細胞)およびTreg(IL-17A-FOXP3+T細胞)の浸潤レベルは歯周炎罹患歯肉組織では健全歯肉組織よりも有意に高かった。またIL-17A+FOXP3+T細胞は歯周炎罹患歯肉組織にのみ少数認められた。 次に歯周炎患者の歯肉および末梢血からCD4+T細胞ラインを樹立して解析したところ,全FOXP3+T細胞におけるIL-17+FOXP3+T細胞の割合は,歯肉由来CD4+T細胞ラインでは末梢血由来CD4+T細胞ラインよりも有意に高かった。 これらの結果より,歯周炎病変部ではTregがTh17にサブセット転換している可能性が示唆された。これまでに多数の研究者が歯周炎病態をT細胞サブセット間のバランスの変化で説明しようとしてきたが,明確な答えは出てきていない。我々の研究は歯周炎病態におけるT細胞のサブセット転換の関与を示唆する初めての研究となった。今後はIL-17+FOXP3+T細胞の歯周炎病態における役割について詳細な解析が必要である。
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