研究課題/領域番号 |
23792472
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
伊藤 晴江 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30397145)
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キーワード | 歯周炎 / follicular helper T cell |
研究概要 |
【目的】 歯周炎は歯周病原細菌の感染により引き起こされる慢性の炎症性疾患である。しかしながらその病態はそこに浸潤している細胞が免疫応答の結果生じるメディエーターにより形成されることが知られている。近年、慢性の炎症巣において患部局所での異所性リンパ濾胞の形成が認められ、そこに存在するfollicular helper T cell(Tfh)とB細胞との相互作用が慢性炎症の維持に関与している可能性があるとの報告がある。そこで今回Tfh細胞に注目し、この細胞が歯周炎の病態形成に関与しているのかその可能性について探ることとした。 【方法と結果】 インフォームドコンセントを得た上で患者より歯周外科処置時もしくは抜歯時に切除された歯肉を採取し、全RNAを抽出した。抽出されたRNAからcDNAを作成し、Real-time PCR法により得られた歯肉組織中における遺伝子発現について検索をおこなった。結果、そのシグナルがT細胞の維持、活性化に関与することが報告されているOX40と、OX40のリガンドでB細胞上に発現するOX40Lの遺伝子発現が歯周炎罹患組織中に認められた。また、ヒト末梢血単核細胞を分離し、歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalisにて刺激培養をおこなった後にそれら細胞が発現する遺伝子について解析を行った。刺激後の細胞では未刺激で培養した細胞に比べOX40、およびOX40L遺伝子発現の増加が認められた。これらのことから歯周炎罹患組織中ではOX40-OX40Lシグナルを介したT細胞とB細胞の相互作用が活性化している可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度では23年度に引き続き歯周炎罹患組織中におけるTfh細胞の局在の有無について検索を行う予定であった。また、歯周炎罹患組織中のT細胞を分離し、刺激培養を行い、解析をする予定だった。しかしながら解析機器の故障が続いたためその予定にやや遅れが生じている。 現在新しい解析機器が導入されたため、今後は順調に解析が進むと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度までの検索により歯周炎罹患組織中に浸潤しているT細胞に、T細胞の活性化、長期維持、分化に関与すると報告されているOX40遺伝子の発現を認めた。さらにこの組織中には抗原提示細胞や内皮細胞およびB細胞に発現することが知られているOX40L遺伝子発現も認めた。また、ヒト末梢血単核細胞を歯周病原細菌にて刺激培養を行ったところOX40、OX40Lの遺伝子発現がともに上昇していたことが認められた。これらのことから歯周炎罹患組織中では歯周病原菌感染によるOX40-OX40Lシグナルの増強とT細胞の活性化およびT細胞とB細胞の相互作用による免疫応答の活性化が起きている可能性があることが考えられる。今後はOX40-OX40Lシグナルが歯周組織破壊ににどのように関与するのかその遺伝子発現の抑制もしくは増強による炎症性メディエータの発現変化について検索を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度では歯周病原細菌あるいは自己抗原に対するTfh細胞の応答を検索する予定としている。従って細胞培養に必要な細胞培養液、血清、サイトカイン、および培養操作に必要なプラスチック製品・ピペットの購入と遺伝子操作のための試薬の購入を予定している。また、Real-time PCR、免疫組織染色及びフローサイトメトリーとELISAによる解析を予定しており、それらに使用する予定の抗体および試薬による支出が見込まれる。
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