【目的】歯周炎は歯周病原菌の感染によって引き起こされる慢性の炎症性疾患である。しかしながらその発症と進行は様々であり、そこには宿主側の免疫応答が関与していると考えられる。歯周炎罹患組織中では多数のB細胞・形質細胞の浸潤が認められている。B細胞が抗体を産生する形質細胞へと分化するにはT細胞の存在が必要とされている。このT細胞に依存する免疫応答に必要な細胞としてFollicular helper T cell(TFH)の存在が近年になって分かってきている。このTFH細胞はB細胞の維持、活性化に関わりまた形質細胞への分化を促進させることが報告されている。歯周炎は前述したようにB細胞浸潤が優勢な慢性炎症性疾患であることからこのTFH細胞が歯周炎の病態形成に関与している可能性が高い。そこで今研究ではTFH細胞が歯周炎の病態形成に及ぼす影響について検索をおこなった。 【方法と結果】歯周炎罹患患者、またその他の患者より歯周外科手術時あるいは抜歯時に切除した歯肉組織を採取し、全RNAを抽出した。この抽出されたRNAを用いて発現している分子の検索を行ったところ歯周炎罹患歯肉組織とその他歯肉組織の両組織中にT細胞のマーカーであるCD3分子の発現が認められた。またT細胞とB細胞の相互作用に関係する事が報告されているOX40とOX40L分子が発現していることも認められた。 また、ヒト末梢血単核細胞を分離して歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalisにて刺激培養をおこない、発現する遺伝子を解析した。刺激後の細胞では未刺激の細胞に比べOX40、およびOX40L遺伝子発現の増加が認められた。これらのことからOX40-OX40Lシグナルを介してT細胞とB細胞が相互に活性化し合い、これにより歯周炎の病態が形成されている可能性があることが示唆された。
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