現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に行なった実験において、1.未分化マーカー転写因子に対する低酸素およびHIF-1αの影響:間葉系幹細胞(MSCs)を低酸素誘導因子HIF-1α誘導因子または未分化維持刺激存在下で培養し、0~72時間でのMSCs未分化マーカー転写因子(ETV1, SOX11, FOXP1,GATA6, SIM2, ETV5, HMGA2, PRDM16, KLF12)の発現に対する評価を行なったところ、GATA6, ETV5, SIM2の発現上昇が12~24時間で認められた。2.骨分化に対する低酸素およびHIF-1αの影響:MSCsを低酸素環境下で培養により骨関連遺伝子の発現レベルおよび石灰化に対する影響の評価を行なったところ、骨分化誘導前に低酸素培養を行なうことにより、石灰化の著明な促進は認めないが、骨関連遺伝子Runx2, Osterix, Osteopontinの促進が認められた。また、骨分化誘導前にNogginまたはトリコスタチンA刺激を行なうことにより同様な結果が得られた。3.低酸素環境下において誘導されうるmicroRNAの網羅的解析:MSCsをHIF-1α誘導条件下で0~72時間培養し、低酸素環境下で誘導されるmicroRNAをmiRNA arrayを用いて網羅的に解析した結果、377種のmicroRNAのうち、すべての誘導因子刺激において上昇を示したmicroRNAは40種であり減少を示したmicroRNAは12種であった。という結果が得られている。これらの結果は、交付申請時の平成23年度研究実施計画をほぼ満たしており、また平成24年度研究実施計画の一部に及んでいるため、現在までの達成度はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.炎症性サイトカイン発現に対する低酸素およびHIF-1αの影響:MSCs,HPL cellsおよび歯肉線維芽細胞(HGF)を低酸素環境下で培養することにより炎症性サイトカインの発現レベルを検討する。HIF-1α誘導因子は(1)低酸素, (2)塩化コバルトを用い、炎症性サイトカインとして、(1)IL-1β (2)IL-8, (3)TNF-α (4)セルロプラスミンの検討を行なう。 2.低酸素誘導未分化関連転写因子の細胞機能に対する影響:HIF-1αおよびこれまでの実験で発現上昇が確認された低酸素誘導性未分化マーカー転写因子(GATA6, ETV5, SIM2)の発現をsiRNAによって抑制し、MSCsおよびHPL cellsでの炎症性サイトカインの発現、細胞増殖および骨分化について検討する。3.低酸素環境下における細胞機能制御に関与するmicroRNAの同定:MSCsにおいて低酸素により誘導されたmicroRNAの中から、遺伝子ライブラリーを用いて低酸素誘導性未分化マーカー転写因子に関連するmicroRNAを選択する。更に、これらの発現が、siRNAによる転写因子の発現制御により影響を受けることを確認するために、HIF-1α誘導環境下で培養した上でmicroRNAの発現解析を行なう。また、HPL cellsおよびHGFを用いても同様な実験を行なう予定である。4.microRNA発現調整による細胞機能に対する影響および歯周組織での炎症制御に対する影響:MSCsおよびHPL cellsにおいて、上記実験で選択したmicroRNAの発現調整を行ない、細胞増殖および骨分化に対する影響を検討する。また、HPL cells, HGFおよびMSCsにおいて、細胞へのmicroRNAトランスフェクションによりmicroRNAの発現調整を行ない、炎症誘導因子存在下での炎症性サイトカインの発現に対する影響を検討する。
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