研究課題/領域番号 |
23792479
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
細川 義隆 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (90346601)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 歯周炎 / 歯肉線維芽細胞 / Th17細胞 / CCL20 |
研究概要 |
歯周炎はプラーク中に含まれる歯周病原性細菌により惹起される慢性炎症性疾患でT細胞を含む免疫担当細胞と線維芽細胞との複雑な相互作用によって病変が形成されていることが報告されている。T細胞の中でもTh17細胞は歯槽骨吸収に関与していることが示唆されている。本研究ではTh17細胞浸潤に関与しているケモカインであるCCL20に着目し、ヒト歯肉線維芽細胞(HGF)からのCCL20産生機構を解明することを目的として解析を行った。今回はTh17細胞が産生するIL-17Aと炎症性サイトカインであるIL-1betaに着目し検討を行った。 この研究により、IL-17AはIL-1betaが誘導するHGFのCCL20産生を相乗的に増強する事が明らかとなった。また、IL-17AとIL-1betaの共刺激で誘導されるCCL20産生にp38 MAPK, ERK, およびNF-kappaBを介する経路が関与しており、western blotを用いた解析によりERKとNF-kappaBを介した経路がより活性化している事があきらかとなった。また、IL-1beta刺激によりIL-17 receptor Cの発現が亢進されることも明らかとした。 これらの結果より、Th17細胞は歯周炎病変局所でIL-17Aを産生し、炎症局所にすでに存在しているIL-1betaと協調し、HGFのCCL20産生を誘導し、さらにTh17細胞が歯周炎病変局所に集積し、歯槽骨吸収を促進する機序が考えられた。ゆえに、CCL20産生を阻害することでTh17細胞浸潤、集積を減少させ、歯周炎病変局所でのTh17細胞関連炎症性歯槽骨吸収を抑制できる可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Th17細胞浸潤に関与しているケモカインであるCCL20を産生する能力が歯周組織構成細胞の一つである歯肉線維芽細胞にある事が23年度の研究結果より明らかとなった。この発見により歯周組織構成細胞自身がCCL20を産生することにより、歯周炎へのTh17細胞浸潤を調節している可能性が示唆された。また、CCL20を誘導する因子としてTh17細胞自身が産生するIL-17Aと歯周炎病変局所での炎症の増悪への関与が示唆されているIL-1betaである事が明らかとなった。この事はTh17細胞自身が歯周炎病変局所において歯周組織構成細胞である歯肉線維芽細胞を刺激し、CCL20産生を誘導することにより、さらなるTh17細胞の浸潤・集積が起こり、歯周炎病変局所での歯槽骨破壊が起こる可能性が考えられた。これらの結果からこの研究の主な目的である歯周炎病変局所へのTh17細胞浸潤機構の一端を明らかにしていると考えられ、この研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
23年度の研究結果により歯周組織構成細胞の一つである歯肉線維芽細胞にTh17細胞浸潤に関与するケモカインであるCCL20産生能がある事が明らかとなった。しかしながら、その他の歯周組織構成細胞(歯肉上皮細胞、歯根膜細胞等)がCCL20産生能があるかに関しては不明である。今後、歯肉線維芽細胞以外の細胞を用い検討を重ねる予定である。 また、23年度の研究によりIL-17AとIL-1betaに歯肉線維芽細胞のCCL20産生を誘導できる事が明らかとなった。しかしながら、他のTh17細胞が産生するサイトカイン(IL-17F, IL-22など)、炎症性サイトカイン(TNF-alpha, IL-6など)や細菌由来物質がCCL20産生を誘導できるかどうかは不明である。今後、細胞を刺激する物質を増やし検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は平成23年度と同様に細胞培養に関する試薬、CCL20産生を検出する試薬(ELISA, Western Blot, RT-PCR関連)などは物品として引き続き必要となり、購入予定である。 また、研究の結果は日本歯科保存学会、日本歯周病学会、日本免疫学会等で発表予定であり、その際、学会開催地までの旅費、宿泊代等で研究費を使用する予定である。
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