研究概要 |
歯周炎はプラーク中に含まれる歯周病原性細菌により惹起される慢性炎症性疾患でT細胞を含む免疫担当細胞と線維芽細胞との複雑な相互作用によって病変が形成されていることが報告されている。T細胞の中でもTh17細胞は炎症性骨吸収に関与していることが示唆されている。本研究ではTh17細胞浸潤に関与しているケモカインであるCCL20に着目し、ヒト歯肉線維芽細胞(HGF)のCCL20産生機構を解明することを目的として解析を行った。今回は新規サイトカインであるTWEAKと炎症性サイトカインであるIL-1betaに着目し検討を行った。 この研究により、TWEAKはIL-1betaが誘導するHGFのCCL20産生を相乗的に増強する事が明らかとなった。また、TWEAKとIL-1betaの共刺激で誘導されるCCL20産生にp38 MAPK, ERK, Akt およびNF-kappaBを介する経路が関与しており、western blot法を用いた解析によりERK, AktおよびNF-kappaBを介した経路がより活性化している事があきらかとなった。 これらの結果より、炎症性細胞から産生されるTWEAKは、炎症局所に存在しているIL-1betaと協調し、HGFのCCL20産生を誘導し、Th17細胞が歯周炎病変局所に集積し、歯槽骨吸収を促進する機序が考えられた。ゆえに、TWEAKを阻害しCCL20産生を減少させることでTh17細胞浸潤、集積を減らし、歯周炎病変局所でのTh17細胞関連炎症性歯槽骨吸収を抑制できる可能性が考えられた。
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