研究課題/領域番号 |
23792480
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福田 隆男 九州大学, 大学病院, 医員 (80507781)
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キーワード | 歯周組織 / 再生 / プロテオーム / アメロジェニン |
研究概要 |
現在、国内における厚労省が認可した唯一の歯周組織再生療法として、幼若豚の歯胚から抽出されたエナメル基質タンパク質:EMD (Emdogain® Gel) が利用されている。しかし、その作用機序についてシグナル伝達分子レベルでの統一的な見解は得られていない。本研究では、EMDの主要タンパク質であるアメロジェニンに注目して歯周組織再生に重要な細胞を用いたプロテオーム解析を行うことにより、新規アメロジェニン会合タンパク質の同定を行い、その会合タンパク質による歯周組織再生機序の可能性を検討している。 そこで申請者はGST 融合アメロジェニンを作成し、アフィニティー樹脂(GST Pull-Down assay)を用いてアメロジェニンと会合したタンパク質の二次元電気泳動と検出を行った。そのスポットをMALDI-TOF MS分析にかけ、データベース検索して新規アメロジェニン結合タンパク質を同定した。アメロジェニンとの会合は歯周組織再生に重要な骨芽細胞の抽出液を用いて会合分子の検討を行った。 SaOS-2骨芽細胞の細胞抽出液におけるアメロジェニン会合タンパクとして16spotの分析を行った結果、細胞骨格関連タンパク群(tubulin, myosin, vimentin,fillamin)およびGrp78,HSP70などが検出された。一方、膜分画において9spotの分析を行い、hnRNP群およびnucleophosmin(B23)などが同定された。アメロジェニン会合分子の中でも、Grp78は両分画に存在していたことに注目し、アメロジェニンとGrp78のin vitroでも検証を行うとともに、精製アメロジェニン蛋白が細胞内へ取り込まれて核近傍へ集積していくことを共焦点顕微鏡撮影で確認した。以上の結果より、Grp78の新規アメロジェニンレセプターの可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H24年度は、まずH23年度の計画として未完成であった、アメロジェニン会合分子のプロテオーム解析による同定の完成を遂行した。その結果、SaOS-2骨芽細胞における可溶性分画と膜分画における比較データをまとめることにより、Grp78がアメロジェニンの新規レセプターとしての可能性が示唆されるとともに、その他の会合分子の骨形成に関する考察が得られた。一方、H24年度に計画していた 以下の計画については、 1.アメロジェジンと新規会合タンパクの会合様式の検討[in vitro 会合実験 ] については GST Pull-Down assayにより、Grp78との会合を確認したが、His-tag(ヒスチジンタグ)融合Grp78の作製が遅れており、GST融合アメロジェニンとの会合部位の同定に至っていない。 2.アメロジェニンと会合分子の細胞内動態の確認 については、共焦点光学顕微鏡にて、蛍光標識したアメロジェニンの細胞内への取り込まれ方について確認を行っている。その結果、アメロジェニンがエンドサイトーシスにより核近傍へ集積していく様子を確認した。一方、新規会合タンパクとの会合局在については、現在検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究により、Grp78/Bipがアメロジェニンの新規レセプターである可能性が示唆された。H24年度の到達目標で遅れている、in votroでのアメロジェニンとGrp78の会合部位・様式の同定と、アメロジェニンの細胞内取り込みにおける局在変化についての結果を早急にまとめる予定である。 一方、アメロジェニンの骨芽細胞におけるプロテオーム解析については、データをまとめて現在は論文作成の準備中である。 また、H25年度は、Grp78がアメロジェニンによる骨芽細胞の増殖・分化にどう影響してゆくかについて、主にRNAiによるGrp78のknockdownを介して検討予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は多種の細胞に対しての機能解析の検査項目が多岐にわたるため、抗体をはじめとする試薬に予算の重点化を計った。次年度の予定しているアメロジェニン会合分子の会合様式の実験は、in vitroであるため迅速な結果が求められる。いち早く世に成果を報告するには国内外の学会への参加や発表が重要であるため、学会発表にかかる旅費を計上している。 H25年度はIADR国際歯科研究学会で、H24年度までのアメロジェニン会合分子のプロテオーム分析およびGrp78の骨形成における関与について、学会発表を予定している。同時に、現在までのアメロジェニンの細胞内取り込みに関するプロテオーム分析の成果について論文作成中であるため、執筆関係費用を計上している。
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