歯周炎の発症や進行において歯周ポケット形成は最も重要な役割を担っているが、そのメカニズムについては不明のままである。、我々はアタッチメントロスに免疫複合体および好中球の浸潤が重要な役割を担っているという所見を得ている。補体成分であるC5aは免疫複合体の形成により誘導され、好中球の強力な走化性因子であり歯周病との関連についても示唆されている。そこでC5aを中心とした免疫系の活性化が、どのように接合上皮細胞間接着分子の破壊に関与しているかを検討し、歯周ポケット形成のメカニズムの一端を解明することを目的に研究計画を立て、本年度は以下のような研究を行った。 非感作ラット及び感作ラットの歯肉溝内へ高濃度LPSを毎日頻回投与することにより歯周ポケット形成を示すラット歯周炎モデルの組織標本を作製しHE染色を行った結果、滴下10日目では非感作ラットではアタッチメントロスは認められなかったが、感作ラットでは明らかなアタッチメントロスが認められた。さらにC1qBの免疫染色を行った結果、アタッチメントロスが生じた感作ラット10日目では接合上皮および上皮下結合組織にC1qBの発現が認められたが、非感作ラットでは認められなかった。このことより滴下したLPSと感作により宿主から発現されたLPS抗体が反応し免疫複合体が形成されることがアタッチメントロスに関与していることが示唆された。さらに抗MMP-2やMMP-8抗体を用いた免疫染色を行い、アタッチメントロス形成時の各因子の発現状況について評価し、その関与について検討しているところである。
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