研究課題
本研究ではTNF-αによるPOEM発現抑制機構ならびにその抑制が骨芽細胞の分化へ与える影響に関する解析、POEMの生体における機能を検討するために主に硬組織で特異的にPOEMを発現するトランスジェニックマウスの作成および表現型の解析、の大きく2つの課題を遂行する予定である。まずPOEMの発現制御機構の解析のため、TNF-αによる細胞内で活性化されるシグナル伝達経路の一つであるNF-κB経路がTNF-αによるPOEM遺伝子の発現抑制の検討を行った。また、NF-κB活性阻害剤がTNF-αによるPOEMの発現の抑制を阻害することがわかった。次にTNF-αによる骨芽細胞分化抑制をPOEMが阻害することができるか検討した。骨芽細胞の分化指標は、アルカリホスファターゼ活性測定および活性染色法により確認した。POEMを骨芽細胞で強制発現させる系として、申請者はすでに動物細胞と大腸菌それぞれでリコンビナントタンパク質を発現することのできる発現ベクターを、理化学研究所 守村直子博士との共同研究で作製・使用している。その結果、POEMの発現により、TNF-αによる骨芽細胞分化抑制がPOEMの過剰発現により阻害されたことを明らかにした。これらの結果は骨芽細胞における炎症性サイトカインであるTNF-αによるPOEM発現制御機構とPOEMの骨芽細胞分化における役割の解明の一助となったと考えられる。
3: やや遅れている
POEMの強制発現のための骨芽細胞へのPOEMベクターのトランスフェクション効率が非常に低く、予想していたより時間がかかった。また、平成23年度に予定していたノックアウトマウスの作製の前にin vitroにおける解析を詳細に検討していくことを研究を進めて行く中で重要視したため。
TNFαによるシグナル伝達経路にはNF-κB経路以外でも、MAPキナーゼ経路、カスパーゼ経路などが知られているなどが知られているので、その経路についても検討していく。また、活性型ビタミンD3と発現制御に関して拮抗する原因を解明するために、TNF-αおよび活性型ビタミンD3のPOEM遺伝子プロモーター内における反応領域(responsible element)および関与する転写因子を同定する。POEM強制発現による骨芽細胞分化への影響を各種骨芽細胞分化マーカー遺伝子にて確認する。さらにPOEM分子内のRGD配列およびMAMドメインを介した細胞接着が骨芽細胞分化にどのような影響を与えるか、また、TNF-αによるPOEMの発現低下が細胞-細胞間および細胞-細胞マトリックス間の接着にどのような影響を与えるか検討する。また、POEMを組織特異的に高発現するトランスジェニックマウスの作製を行う。
プロモーター解析および、遺伝子発現解析の試薬に用いる。現在プラスミドベクターを用いているが、骨芽細胞で効率よく遺伝子を発現させることのできる、アデノウイルスベクターで発現させる系を確立する。また、in vitroの系では細胞株のみならず初代培養系骨芽細胞の採取のため、マウスを使用する。さらに、POEMを組織特異的に高発現するトランスジェニックマウスの作製および解析を行う。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Biochem Biophys Res Commun
巻: 410 ページ: 766-70