研究課題
本研究では、骨芽細胞におけるPOEM(nephronectin)の発現制御機および骨形成における役割について検討するために、炎症性サイトカインや増殖因子によるPOEM発現制御機構とその作用機序の解明を遂行した。前年度までに、炎症性サイトカインであるTNFαが濃度および時間依存的に骨芽細胞においてPOEMの発現を抑制することを明らかにした。また、POEMを矯正発現した骨芽細胞において、TNFαによる骨芽細胞分化抑制を阻害することが明らかになった。さらに、TNF-αにより細胞内で活性化されるシグナル伝達経路として、NF-KB経路、MAPキナーゼ経路、カスパーゼ経路などが知られているが、このうちNF-KB阻害剤を用いることで、TNFαによるPOEMの発現抑制を阻害することがわかった。また、申請者は以前に増殖因子であるTGFβが骨芽細胞におけるPOEMの発現を強力に抑制し、その発現抑制はTGF-β受容体からERK1/2およびJNK経路の活性化を介し行われていることを見出している。そして、TGFβのシグナル伝達経路であるSMAD経路において重要なSmad2のsiRNAを用いて骨芽細胞で強制発現させたところ、POEMの発現が増加することがわかった。このことから、SMAD経路においても、TGF-βによるPOEMの発現抑制が関連していることが明らかになった。これらの結果から、POEMが骨芽細胞分化において重要な役割をもち、また、種々のサイトカインによって制御されていることが明らかになり、POEMの遺伝子発現制御および骨芽細胞における機能解明の一助となったと考えられる。
すべて 2012
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Biochem Biophys Res Commun
巻: 425 ページ: 390-392