研究課題/領域番号 |
23792489
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
氏家 優子 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (60588599)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 好中球エラスターゼ / 好中球エラスターゼ阻害剤 / 慢性歯周病疾患モデル / 破骨細胞 |
研究概要 |
本研究の実験目的は1)歯周病原菌の感染によって浸潤した好中球から放出される好中球エラスターゼが歯根膜細胞に及ぼす影響を調べる2)好中球エラスターゼの阻害剤の歯根膜細胞への影響を調べる3)慢性歯周病モデルにおける好中球エラスターゼの作用と、阻害剤の効果を調べ、好中球エラスターゼ阻害剤に着目した歯周病治療薬として臨床応用できる可能性を検討するである。平成23年度は、この3つの実験目的の内1)と3)に関して実験を進めた。 歯根膜細胞における好中球エラスターゼの影響を調べるために、まずは歯周病原細菌のLPS刺激時に歯根膜中に好中球エラスターゼが分泌されている事を確認した。歯根膜細胞の培養上清に3種の異なるLPS:E.coli, Porphyromonas gingivalis(P.g), Prevotela intermedia(P.i)を加えて遺伝子発現を調べた。その結果、好中球エラスターゼの発現はLPSを加えた全ての群で認められた。LPSの種類間に差は生じなかった。 また、ラット慢性歯周病モデルの作製の手技、系の確立を目指し実験を行った。ラットの上顎第二大臼歯をシルク5-0糸で結紮した。さらに同日にその結紮糸の周辺に、Carboxymethylcelluloseと混ぜ合わせることでゲル状になったP.g菌を播種した。10日後に屠殺しマイクロCTにて結紮した歯の周囲の歯槽骨が反対側の非結紮側を比較して顕著に吸収されていることを確認した。この結果により、慢性歯周病モデルの系が確立されたことが確認された。 この慢性歯周病モデルが確立されたことから、平成24年度の実験実施計画にあった「ラット慢性歯周病モデルでの好中球エラスターゼ阻害剤の影響を調べる」実験も引き続いて行った。現在、実験結果の分析、評価をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vivoにおいては、実験に時間がかかると予想されていたラット慢性歯周病モデルの確立は既に行われている。さらに、そのモデルを用いて行う好中球エラスターゼ阻害剤を注入した浸透圧ミニポンプを用いた動物実験も既に行った。この実験手技はとても難しく、試行錯誤する事を想定したいたが実際には、念密な実験準備と実験協力者の先生方の豊富な経験により速やかに実験を行う事ができた。この事が本実験の達成度に大きく貢献していると考えている。In vivo実験は当初の計画以上に進展している状況である。 またIn vitroでは、実験に用いる細胞、試薬などの環境的要因は全て整っている。そのため、実験を進める事はできている。しかし、当初の計画よりも歯根膜細胞の増殖に時間がかかり、また実験を行うのに十分量の細胞数を確保する事に時間がかかっている。よって、In vitroではやや実験に遅れが生じている。しかし、細胞数さえ確保出来れば実験を行うに当たっての問題点は少ないと思われる。また分析方法としてRT-PCR及び、Real-Time PCRを用いる予定のため比較的短時間で実験結果が得られると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定よりも、In vitro実験の方に少し遅れが生じているため、今後はまず歯根膜細胞を用いた培養実験を積極的に行っていく予定。歯根膜細胞に好中球エラスターゼとその阻害剤を添加し、炎症性サイトカイン、骨細胞の分化と抑制に関与する因子、コラーゲン線維分解因子についての遺伝子発現を調べる。これにより、好中球エラスターゼとその阻害剤が歯根膜細胞に及ぼす影響について解明していきたい。 またラット慢性歯周病モデルにて好中球エラスターゼ阻害剤の効果を調べるIn vivo実験に関しては組織学的分析を進めて行きたい。この結果によっては、n数を増やすために更なる動物実験が必要となる場合も想定されるので、組織切片の作製、染色、結果の分析は速やかに行われる必要性がある。 平成23年度の直接経費の未使用額が\37,212あるが、これは人件費、謝金として使用しなかった為に未使用な研究費が生じた。当初は細胞培養実験の一環としてPCRを頻回行う予定であり、その際に有志の学生さんにその一部を手伝ってもらう予定であったので、少しの謝金を用意しておいた。しかし実際には、前述したように細胞培養実験が計画通りには進まなかったために学生さんに実験の手伝いを依頼する事はなかった。そのために、その謝金として取っておいた金額が未使用となった。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養関連、組織学的分析、動物実験などの実験に使用する消耗品は、前年度同様に必要性に合わせて購入する予定。 またこれらの実験を行うに当たって、効率よく実験が行われるように補助的な器具(電動マルチピペットや、小型遠心器など)を購入することで、限られた実験時間を能率良く使いたい。 さらなる実験の効率化を図る為に、単純作業だが手間と時間のかかるPCRの実施等に関しては、有志で手伝いをしてくれる学生さんがいたら、実験の補助をお願いしたいと思っている。その方々への謝金として前年度の未使用額を利用出来たら良いと考えている。 最終的には、実験の結果をまとめて学会発表や論文の投稿を目指しているので、それに伴い学会への出張旅費、英語添削や雑誌への投稿費用などに研究費を使用することを考えている。
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