頭頚部領域のがんに対する放射線療法では、深刻な口腔粘膜炎によって、治療が中断される事が、一つの大きな問題であり、口腔粘膜炎の軽減のための治療法の確立が求められている。そこで、我々のグループでは、2012年より患者に対して半夏瀉心湯の臨床応用を行ったところ、口腔粘膜炎のグレードが投与群のグレードの平均が1.6、日投与群のゲレードの平均が2.8と有意に口腔粘膜炎の改善効果を確認した。 そこで、株式会社ツムラより半夏瀉心湯原末の提供を受け、In vitroの実験系において、半夏瀉心湯における口腔粘膜炎の改善のメカニズムについて検索をおこなった。細胞培養系において上皮系の細胞の細胞増殖能について検索を行った。使用した細胞は口腔粘膜上皮がん細胞由来TR146細胞とヒト胎児腎細胞HEK293細胞である。ともに、上皮系細胞であるが、臓器が異なっており、半夏瀉心湯の効果が、消化器系上皮細胞に特異的に作用するかについて検討を行った。前年度に効果を検証したポラプレジンクは腎細胞ゆらいのHEK293に対し薬理作用を示したが、半夏瀉心湯は、HEK293には細胞増殖、細胞遊走、細胞外マトリックスの分泌に対して薬理作用を示さなかった。一方、口腔上皮由来のTR146に対して、細胞増殖を誘導する事が観察された。半夏瀉心湯を培養液中に添加したところ、BrdU陽性細胞率は、0 ug/ml 7.66%、 1 ug/ml 8.4%、 10 ug/ml 8.4%、 100 ug/ml 9.6%となり、0ugと100ugの間に有為な差(p<0.05)を認めた。しかしながら、細胞遊走能と細胞外マトリックスの分泌については有為な差を添加群で示さなかった。これらの事より、半夏瀉心湯は上皮細胞特異的に作用し、創傷治癒における上皮細胞の細胞増殖を誘導する事で治癒の促進や潰瘍形成の予防に関与している
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