本研究は、脳心血管疾患の発症基盤である動脈硬化のリスクファクター(高血圧、糖代謝異常、脂質代謝異常、肥満)と歯周病との関連を縦断的に検討し、両者の関係を明らかにすることを目的としている。調査対象は申請者が参画している「大迫研究」のコホート集団(岩手県花巻市大迫町在住、55歳以上の男女)である。大迫研究は、東北大学大学院医学系研究科を中心に1986年より続く一般地域住民を対象とした高血圧・循環器疾患に関する長期前向きコホート研究で、2005年から歯科検診が本格導入された。 平成23年度は、10月~3月の間に計5回の医科・歯科検診を実施した。受診した125名に対しパノラマX線撮影を含む歯科学検査(口腔内診査、歯周病検査、口腔衛生状態および義歯に関する聞き取り調査)および医科学検査(血液検査、身体検査、喫煙暦・飲酒暦・既往歴等の聴取)を行い、歯周病を評価する包括的歯科データならびに動脈硬化のリスクファクターの評価指標となる各種データを得た。 平成24年度は、前年に引き続き10月~3月の間に計5回の医科・歯科検診を実施した。受診者は96名で、歯科検診が導入された2005年からの参加延べ人数は982名となった。このうち、約4年の観察期間をおいて複数回受診した者を検索したところ、234名が抽出された。ここからさらに無歯顎者などを除外し、データ集計の完了している約100名を対象に統計解析を試みたところ、歯周病の重症度と肥満の進行(ウエスト径の増加)の関連性を示唆する結果が得られた。 歯周病と動脈硬化性疾患の経年的な関連や因果関係を解析するためには,大規模集団を対象とした縦断研究が必要不可欠であり、コホートの拡大もまた重要な要素となる。したがって、本研究の申請期間内に得られた調査結果はデータベース化し、将来的な追跡研究の基礎とする。
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