研究課題/領域番号 |
23792506
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
金子 昇 新潟大学, 医歯学系, 助教 (00397126)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 歯学 / ミュータンスレンサ球菌 / 齲蝕原性 |
研究概要 |
Streptococcus mutansは粘着性の非水溶性グルカンを合成して歯面に固着する性質を持ち、この性質はこの菌の齲蝕原性に大きく関与している。我々はS. mutans臨床分離株間で非水溶性グルカン合成能に差が見られることに注目して、この合成能の差を説明する変異をgtfB遺伝子中に発見し、これを利用した遺伝子検査法を開発した。本研究計画においては、この検査法を齲蝕活動性試験として使用できるものにすることを目的としている。平成23年度中、小学生児童から臨床分離したS. mutans株について、非水溶性グルカン合成能の測定を行った。また、以前の研究で分離したS. mutans株について、非水溶性グルカン合成酵素をコードしているgtfB遺伝子の塩基配列を決定し、遺伝子の株間に見られる変異と非水溶性グルカン合成能の関係について検討を行った。以前、gtfB遺伝子の3'末端側におけるdirect repeatで、菌株によって通常3.5回の繰り返し回数に変化が見られ、特に2.5回に減少している菌株で非水溶性グルカン合成能が低下していることを報告した。今回の分析で、direct repeatを構成している反復単位中、33番目のアミノ酸であるGlyをSerに置換するような変異を持つ菌株で、非水溶性グルカン合成能が上昇していることを発見した。齲蝕活動性試験を行う場合、齲蝕原性が低下しているS. mutans菌の有無を調べる試験よりも、齲蝕原性が上昇しているS. mutansの有無を調べる試験の方が、有用性が高いと言える。今回の知見を齲蝕活動性試験に組み入れることで、より高性能な試験を行うことができるものと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、Streptococcus mutans臨床分離株について、非水溶性グルカン合成能の測定を行い、また、gtfB遺伝子の塩基配列を決定して、gtf遺伝子の株間に見られる変異と非水溶性グルカン合成能の関係について検討を行っている。グルカン合成能の測定は、まだ全ての株について終わっておらず、その意味では当初の研究計画より遅れているが、一方、24年度以降に予定していた、gtfB遺伝子の塩基配列の決定と変異の検討を既に始めている。総合的に見て、順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、Streptococcus mutans臨床分離株について、非水溶性グルカン合成能の測定を行う。また、分離株におけるgtfB遺伝子の塩基配列の決定、株間に見られる変異部位の検索および変異様式の検討についても行っていく。23年度中に購入を予定していた研究備品(プレートリーダー)であるが、現有の古いプレートリーダーがまだ使用できたため、その分の研究費を節約できた。また、23年度の実験中、分離株の保存、蘇生、継代の過程で、コンタミの疑われる例が見られた。今後、このようなことを防止するために、クリーンベンチまたは安全キャビネットの設置を検討している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究消耗品として30万円程度を予定している。また、研究備品として、安全キャビネット BHC-1000IIA(1×@1,029千円)の購入を検討している。また、旅費・その他として15万円程度を予定している。
|