研究課題/領域番号 |
23792506
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
金子 昇 新潟大学, 医歯学系, 助教 (00397126)
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キーワード | 歯学 / ミュータンスレンサ球菌 / 齲蝕原性 |
研究概要 |
臨床の場において、口腔内にStreptococcus mutansがそれほど存在していないにも関わらず、齲蝕が発症する児童に遭遇することがある。こうした児童においては、S. mutansの菌数は少ないが、存在するS. mutans株が、特に齲蝕を誘発する能力の高い菌株である可能性がある。我々はこの仮説に基づいて、分離したS. mutans株が強い齲蝕原性をもつ菌株かどうか判定する遺伝子検査法をこれまでに開発した。本研究においては、この検査法を齲蝕活動性試験として使用できるものにすることを目的としている。 平成24年度中、小学生児童から臨床分離したS. mutans株について、非水溶性グルカン合成能の測定およびgtfB遺伝子の塩基配列の決定を行いつつ、仮説の検証として、小学生児童の保有しているS. mutans株の非水溶性グルカン合成能と1年間のう蝕増加歯数との関連性について検討を行った。その結果、フッ化物洗口を行っていない児童集団では、S. mutansの保有の有無と齲蝕の罹患・増加と関連性が比較的認められるのに対し、フッ化物洗口を行い齲蝕の発生が減少している児童集団では、S. mutansの保有の有無と齲蝕増加歯数との関連性は低下しており、むしろ保有しているS. mutans株の非水溶性グルカン合成能の強弱の方が、1年後のう蝕増加と強い関連性を示すことが明らかになった。 また前年度中、gtfBのC末端側のdirect repeatを構成している反復単位中、33番目のアミノ酸であるGlyをSerに置換するような変異を持つS. mutans株で非水溶性グルカン合成能が上昇していることを発見したが、その変異を容易に検出できるようなPCRプライマーの設計を現在行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、Streptococcus mutans臨床分離株について、非水溶性グルカン合成能の測定を行い、また、gtfB遺伝子の塩基配列を決定して、gtfB遺伝子の株間に見られる変異と非水溶性グルカン合成能の関係について検討を行っている。グルカン合成能の測定はほとんどの菌株で終わり、また当初予定していた、gtfBのC末端側のdirect repeatの反復回数についても、多くの菌株で終了している。現在、前年度中に非水溶性グルカン合成能の強弱と関連していることを発見した、direct repeatを構成している反復単位中、33番目のアミノ酸であるGlyをSerに置換するような変異について、これを容易に検出できるPCRプライマーの設計を行っており、これを用いた検査の検討も行いたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、残りのS. mutans臨床分離株について非水溶性グルカン合成能の測定を行っていく。また、分離株におけるgtfB遺伝子の塩基配列の決定と、反復単位中の変異を検出するPCRプライマーの設計およびこれを用いた検査の検討も行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に1,972円繰り越してはいるが少額であり、現在の所、当初の使用計画から変更する予定はない。
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