本研究では,動物モデル研究において,咬合異常とアルツハイマー病との関連を明らかにすることを目的とした。 平成23年度では,ラットモデルを用いて,コントロール群・咬合異常群・ApoEノックアウト群・ApoEノックアウト+咬合異常群の4群比較を行った。4群の間で迷路テスト正答率に差があるかどうか評価を行い,咬合異常とApoE欠損がアルツハイマー病の発症に関与しているかどうか調べた。その結果,ワイルドタイプラットにおいて,咬合異常を引き起こすと正答数が有意に減少した(P<0.05)。ApoEノックアウトラットにおいても,同様に咬合異常により有意に正答数が減少した(P<0.0125)。一方,ワイルドタイプラットとApoEノックアウトラットの比較では有意な差がみられなかった。 H24年度は,前年度に得られたRNAを用いてアミロイドβ産生関連遺伝子を調べた。咬合異常群の海馬には,対照群に比べてベータセクレターゼの遺伝子発現が有意に多かった(P<0.0125)。しかし,種による差は見られなかった。さらに,海馬におけるアミロイドβの量を調べた。いずれの種においても咬合異常群の海馬には,対照群に比べてアミロイドβの蓄積が有意に多かった(P<0.0125)。また,対照群においてのみ種による差がみられた(P<0.0125)。病理標本においては,明らかな差は認められなかった。 以上の結果より,ラット海馬のアミロイドβの蓄積および認知障害に対して,アポリポ蛋白E欠損よりも咬合異常による影響の方が大きかった。
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