研究概要 |
口腔粘膜炎は、がんの放射線治療や化学療法による副作用として発症する。本研究では、酸化ストレスや細菌の観点から、口腔粘膜炎発症のメカニズムを解明することを目指している。本研究の目的は、頭頸部がん患者における①唾液や血漿中の酸化ストレス、口腔内の細菌叢の特徴を明らかにする、②口腔ケアによる唾液や血漿中の酸化ストレス、口腔内の細菌叢の変化を検証する、③口腔ケアによる酸化ストレスや細菌叢の変化と、放射線化学療法による口腔粘膜炎の発症や重症度との関係を明らかにする、という3点である。 予防歯科初診時に、全身状態と生活習慣、頭頸部がんの部位や進行度など、頭頸部がんの治療内容、歯周組織の状態、歯垢付着状態、口腔粘膜炎の状態、唾液・血液(血漿)の酸化・還元力、粘膜保湿度、歯肉溝浸出液・咽頭ぬぐい液を採取し、口腔内の細菌叢の評価を行った。歯肉溝浸出液と咽頭ぬぐい液からDNAを抽出し、multiplex PCR法により口腔内細菌の同定を行った。同定する菌種は、歯肉溝浸出液中の細菌(P.g, A.a等7菌種)、咽頭粘膜細菌(Candida. albicansなどの5菌種)とした。 平成23年度は、①頭頸部がん患者における唾液や血漿中の酸化ストレス、口腔内の細菌叢の特徴を明らかにすることに取り組んだ。 平成24年度は、、②口腔ケアによる唾液や血漿中の酸化ストレス、口腔内の細菌叢の変化を検証する、③口腔ケアによる酸化ストレスや細菌叢の変化と、放射線化学療法による口腔粘膜炎の発症や重症度との関係を明らかにすることに取り組んだ。 その結果、口腔内の細菌叢と酸化ストレスや全身状態には、有意な関連は認められなかった。また、口腔粘膜炎の発症や重症度は、酸化ストレスよりも放射線化学療法や化学療法の回数に関連があった。血漿中の酸化ストレスは、口腔粘膜炎の発症、重症化には影響しない可能性が示された。
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