経鼻免疫法による分泌液中への抗体産生を調べたところ、PC-KLHで免役されたマウスの血清および粘膜分泌液中の抗体価はLPSを同時投与することにより上昇した。具体的には、血清および鼻腔洗浄液中のIgM、IgGおよびIgAアイソタイプ抗PC抗体はともに上昇し、唾液中においてはIgA抗PC抗体のみ上昇を示した。LPSによる抗体産生量はCTと同程度であり、これはAFCs数の増加より細胞レベルでも確認することができた。粘膜アジュバントとしてのLPSの潜在性を異なるハプテンモデル(TNP-KLH免疫)で証明することができ、LPSはCTの代わりの粘膜アジュバントとして使用可能であることを明らかにした。 長崎県五島市で実施された特定健康診査において採取した血漿と唾液を前年度に確立したELISA測定系に用いた。動脈硬化リスクと血中および唾液中のアイソタイプ別抗PC抗体との関連性を検討した結果,血中のIgM抗PC抗体価の上昇が動脈硬化リスクの低下と関連することが示された。また、歯周健常群では,血中IgM抗PC抗体価が動脈硬化リスクの低下と有意に関連することが示唆された。歯周疾患群でも,統計学的に有意ではないが血中IgM抗PC抗体価の上昇が動脈硬化リスクの低下と関連する傾向が,さらに唾液中IgA抗PC抗体価の上昇が動脈硬化リスクの上昇と関連する傾向にあることが示唆された。血中IgM抗PC抗体は動脈硬化リスクの低下と関連しているが,血中および唾液中の抗PC抗体の動脈硬化リスクへの影響を分析するにあたり,歯周疾患の有無という背景因子を考慮する必要があると考えられる。
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