研究概要 |
歯科医療の多くは外科的処置を伴い、その医療環境は患者の唾液、血液や病巣切片などが常時周囲に飛散する状況である。また、近年の新型インフルエンザ流行、多剤耐性菌等による院内感染等を契機に、感染予防対策の整備や充実は急務の課題である。本研究では、歯科医療における感染予防対策を充実させ、歯科医療環境を改善するために、研究期間内に1)歯科医療環境における細菌汚染状況調査、2)歯科医療環境の感染予防対策評価指標への実証検討を目的に研究を行ってきた。23,24年度の実績を基に25年度も引き続き研究を行い、以下のような成果と課題を得た。 1)全てのデンタルユニット給水系配管内からバイオフィルム形成が認められた。デンタルユニットの各給水系における細菌汚染状況調査を実施した結果、給水箇所の使用頻度によって細菌数は異なった。またデンタルユニットごと検出される細菌種はほぼ同じであったが、細菌種の検出割合は各給水箇所によって違いがみられた。デンタルユニット給水系の水質検査は、今回、従来法の細菌培養法によって実施したが、煩雑で培養時間を要した。現在、食品衛生検査では、ATP測定検査を指標に迅速かつ高感度な検査が実施されている。この方法をデンタルユニット給水系におけるモニタリングや水質評価に今後応用して実施してみたい。 2)歯科医療環境調査として日本の家屋における病害昆虫のひとつであるタバコシバンムシの歯科医院における生息状況を調べた。歯科医院からもタバコシバンムシが捕集され、比較対象として行った一般家庭の平均23匹より、歯科医院4軒がそれを上回った。今回捕集したタバコシバンムシからはMRSAやVREなどの薬剤耐性菌は認められなかった。医療環境整備は目視確認だけでは行き届かないところもあり、この病害昆虫は歯科医療環境調査のひとつの指標として院内感染対策に有用であることが示唆された。
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