研究課題/領域番号 |
23792523
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
神尾 宜昌 日本大学, 歯学部, 助教 (60546472)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | メタボリックシンドローム / 歯周病 / 遊離脂肪酸 |
研究概要 |
メタボリックシンドロームは内臓脂肪型肥満を基盤とし、高血圧、高血糖あるいは脂質代謝異常などの疾患を併せ持つ状態であり、歯周病との関連性が疫学研究により指摘されている。しかしながら、メタボリックシンドロームと歯周病との関連性を細胞生物学的に調べた報告は少なく不明な点が多い。 メタボリックシンドロームの病態は、細胞生物学的には、肥満に伴う内臓脂肪細胞から分泌される「様々な種類の生理活性物質 (アディポカイン)の分泌異常」と「遊離脂肪酸の過剰放出」を特徴とする。そこで本研究では、アディポカインと遊離脂肪酸が歯周病の初期段階における炎症性の破壊および進行期における歯槽骨吸収に及ぼす影響を検討し、メタボリックシンドロームが歯周病を増悪させる分子機構を細胞生物学的に解明することを目的とする。 本年度はマウス単球/マクロファージ様細胞 (RAW264.7 細胞)を用いて、飽和脂肪酸の一種であるパルミチン酸をウシ血清アルブミンと結合させたもの(PA-BSA)で前処理した後、Porphyromonas gingivalis由来のLPSで刺激し、各種炎症性サイトカインの遺伝子発現およびタンパク質発現をreal-time PCRおよびELISAで調べた。その結果、PA-BSA前処理後にLPS刺激を行うと炎症性サイトカインであるIL-6の遺伝子発現およびタンパク発現がLPS単独刺激に比べ増強された。また炎症時に発現するCOX-2もPA-BSA前処理後にLPS刺激を行うとLPS単独刺激に比べて発現が増強された。以上の結果より、パルミチン酸は歯周病原菌由来のLPS刺激による炎症反応を増強させることから、メタボリックシンドロームにより血中パルミチン酸が増えると、歯周病を増悪させる一助となることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、マクロファージにおいて飽和脂肪酸の一種であるパルミチン酸が歯周病原菌由来LPS刺激による炎症反応を増強させることから、メタボリックシンドロームが歯周病を増悪させるメカニズムの一端を明らかにした。しかしながら、本年度はIL-6およびCOX-2の発現についてのみ検討しており、今後、他の炎症関連因子の挙動についても検討すべきである。また、パルミチン酸前処理により炎症が増強されるメカニズムが明らかとなっておらず、解明する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
パルミチン酸が歯周病原菌由来LPS刺激により炎症反応を増強させることが明らかとなったものの、そのメカニズムについては明らかとなっていない。そこで今後は炎症反応を増強させるメカニズムについて解明する予定である。 さらに、メタボリックシンドロームが歯周病における歯槽骨吸収に与える影響を解明するため、アディポカインおよび遊離脂肪酸がRANKL誘導による破骨細胞への分化および破骨細胞の機能へ与える影響について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を遂行して行く上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込額と執行額は異なった。しかしながら研究計画に変更はなく、パルミチン酸による炎症増強メカニズムの解明および破骨細胞分化へ与える影響を検討するため、研究試薬等に繰越した研究費も含めて使用する。
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