本研究はエナメル質酸蝕症の早期検出および検出されたエナメル質酸蝕症の定量を確定するための基礎的な研究である.また,酸蝕症の予防に効果的な手段を構築することも重要であると考えている.よって酸蝕症の試料を作成するにあたって,単にエナメル質試料の酸暴露時間をアレンジした試料のみを作成するのではなく,予防手段として効果的であると推測されるフッ化物を酸蝕症試料の作成に取り入れる必要があると考えている. 本研究では牛歯エナメル質を試料として,エナメル質ブロックを切り出し,通法に従って表面研磨を行った後,フッ化物による表面処理を行った試料と行わなかった試料を作成し,それぞれの試料に対して30秒間隔で120秒間の酸処理を行うことによって1試料あたり5つの異なった酸蝕試料を作成した.顕微鏡像を観察した後,より早期の酸蝕状態を観察するための照明環境およびCCDカメラのレンズに取り付けるフィルター,および観察環境の検討を行った.つまり,現在臨床でエナメル質の表面観察のために使用されている機器ではエナメル質酸蝕症の検出や定量が困難であるため,より早期にエナメル質の変化を検出するための条件を検討した.その結果,観察環境は暗室が望ましい事,照射光は波長405nmのLEDを用いること,CCDカメラに取り付けるフィルターは410nmのバンドパスフィルターを用いることによってエナメル質表面の微細な変化を検出,観察できる可能性が分かった.
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