研究概要 |
申請者らはこれまでに、酸化ストレスを制御する転写因子の1つであるFoxo1に着目し、酸化ストレスと骨形成の分子メカニズムの解明を行ってきた。今回、酸化ストレスによる歯周病の病態の変化を明らかにするために、まず骨芽細胞が破骨細胞への分化に影響を及ぼすメカニズムに注目した。骨芽細胞は1,25(OH)2D3の刺激によりRANKLを発現し、破骨細胞の分化を促進する。そして、この作用はBMP-2との共刺激でさらに促進されることが報告されている。そこで、共刺激による骨芽細胞の破骨細胞分化因子発現のメカニズムをBMP-2のシグナル経路の一つであるSmad1に着目し検討した。1,25(OH)2D3 (10-8 M)やBMP-2 (100 ng/mL)刺激により、RANKL mRNA発現は1,25(OH)2D3単独刺激に比べて有意に高値を示した。さらにVDRタンパク質発現は上昇していた。一方、Smad1をノックダウンした細胞では、コントロール群に比べて、VDR、RANKL発現は減少した。以上より、BMP-2がSmad1を活性化させることで、1,25(OH)2D3存在下でのRANKLやVDRを上昇させ、その結果、骨芽細胞による破骨細胞分化が促進することが示唆された。破骨細胞への分化のメカニズムの一端が示唆されたことにより、歯周病における骨吸収がおこる仕組みの解明につながったと考えられる。これらの結果を踏まえ、酸化ストレスによる骨吸収の関与に焦点をおいて、実験を続ける次第である。
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