本年度は、昨年度までのヒアリング調査を基に、2ヶ所の総合周産期母子医療センター(以下、周産期センター)において、産科部門、新生児部門両者における全患者の病床配置、分娩および手術等も含めた患者移動、患者属性、病棟属性等の調査を行った。 調査の結果、周産期センターにおける20~30%の新生児が、NICUもしくはGCUでの管理が必要であった。また、各集中治療室に入室するうちの半数は手術室、残りの半数は分娩室から新生児部門に入室していることが明らかになった。さらに、分娩後に集中治療管理が必要となった新生児は、妊娠期にMFICUでの管理されていた胎児よりも産科病棟で管理されていた胎児が多かった。このことから、周産期センターにおいてはMFICUに管理されている胎児だけでなく、産科病棟で管理されている胎児にもリスクがあることが明らかになった。よって、安全性を確保する建築計画のためには、新生児部門と分娩室や手術部との近接性が重要であると示唆された。 次に、両周産期センターともに常時NICUが満床状態であった。そのため、NICU管理が必要な新生児が出生もしくは緊急搬送された際にはやむを得ずNICUに入院していた新生児をGCUへ転室させ、GCUをNICUの代替として利用していた。このことから、新生児部門では両集中治療室間の新生児移動によりベッドコントロールをしていることが推察された。よって、周産期センターにおいてNICUとGCUは隣接配置する必要性が示唆された。 本年度は2ヶ所の周産期センターの調査をしたが、各地域の背景により、MFICUやNICU患者の疾患の種類、母体もしくは新生児搬送数にも相違があるため、今後調査を積み上げ、病床規模や配置計画のあり方を明確にしていくことが課題である。
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