看護系大学1年生にロールレタリングと呼ばれる筆記課題を実施した。看護学生の想像活動に没入できる特性によって、またロールレタリングの記述によって、共感性が成長促進される領域や効果の差異を検証することが本研究の目的である。架空の患者(3事例)と看護師との相互交渉を記述する課題を実施した。a)看護師から患者への声かけ、b)患者の応答、看護師への助言、c)看護師から患者への声かけ、d)患者の応答の4つを順番に書いていく構造である。想像活動への関与尺度の平均値(3.54)でH、L群を設け、実施前後に多次元共感性尺度を測定した。また記述の質的分析を行った。 共感性の全体的な得点の低下がみられ、H群で顕著であった。また群によらず情動的側面(被影響性など)は低下する結果が確認された。ロールレタリングの記述の多様性が中程度の群で共感性が高く、また幅が広い群(多様な心的描写ができた群)で「想像性」因子が低下しなかった。ロールレタリングの中で患者と看護師の今後の関係性について記述した群では、複数の因子得点が低下せず、「視点取得」因子が向上する傾向がみられた。 共感性の低い群や低下した群、その因子を考慮すると、ロールレタリングを用いた看護学生の共感性の育成によって、看護学生が自らの共感性を再評価し、情動的な自他の区別を行ったことが推察される。患者の気持ちと看護師の気持ちを区別しながら、看護学生は共感性を育んでいくプロセスが想定できる。また大学一年生という初期の段階でも、患者と看護師の今後の関係性について記述できることが、患者の身になる「視点取得」の向上と関係することが示唆された。
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