研究課題/領域番号 |
23792543
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研究機関 | 長野県看護大学 |
研究代表者 |
田中 真木 長野県看護大学, 看護学部, 助教 (00405127)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 看護学生 / 臨地実習 / 倫理観 |
研究概要 |
平成23年度は、臨地実習の経験がある看護学生20名程度に半構成的インタビューを行い、臨地実習で遭遇した倫理問題への対処行動からみえる看護学生の倫理観を質的帰納的手法によって記述し、看護学生の持つ倫理観の仮説的特質を抽出することを目的に実施した。今までの実習経験から、「何を行うことが正しいのか間違っているのか、人の行いにおいて何がよいことで、何が悪いことなのか、と考えさせられる問題(倫理問題)」についてインタビューガイドを作成し、その時の状況、自分自身はその場面をどう捉え、どのような行動をとったのか、それはなぜかを半構成的面接法を用い、語ってもらった。面接内容は逐語録化し、対象者の語る具体的なエピソードを抜き出し、学生が遭遇した倫理問題への具体的な行動とその背景を分析し、そこから現れる倫理観の仮説的特質を抽出した。研究の全過程において、国外の看護研究者にスーパーバイズを受けた。そのスーパーバイザーに指導を受けながらエピソードを通読し、倫理問題とその対処行動、内的要因の汲み取り方は妥当か、コード、カテゴリー名は語りを反映したものか等を検討した。その結果、看護学生が遭遇した倫理問題は、「原則的問題」、「倫理上の権利の問題」、「倫理的義務・倫理的責務の問題」があり、それら倫理問題への対処行動として、「何もできなかった」、「へんだな、と思うだけだった」等、倫理問題に対して行動を取らない、疑問や問題への思いを抱えるという事のみに留まっていることが明らかとなった。その内的要因としては、「自分は看護学生だから」、「自分の受け持ち患者ではないから」、「今後気を付ければよい」等の気持ちが語られた。以上の結果から、看護学生は倫理問題を捉える感性は備わっているが、その施設内での実習生である立場や受け持ち患者以外への責任の捉え方などが、倫理問題への対処行動に関わっていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の第1段階(平成23年度)では、臨地実習の経験がある看護学生20名程度にインタビューを行い、質的手法で看護学生の持つ倫理観の仮説的特質を抽出することを目的とした。続く第2段階(平成24年度)では、第1段階で得られた特質を検証するため多数の看護学生を対象に質問紙調査を行い、そこから、看護学生の持つケアリングの倫理観を類型化し、今後の看護倫理教育の在り方を探求してゆくことを最終目標に挙げている。平成23年度の質的分析手法による仮説的特質はサンプル数7名という中で行ったものであり、平成24年度にリッカート法での質問紙作成には十分なサンプル数とは言えない。その具体的理由としては、対象の教育機関が1校であったこと、対象者選定基準である全領域の実習を終えた学生は4年生の後期に該当するため、従来の授業に追加して卒業研究や国家試験勉強等の個人的要因があり、研究へのインタビュー時間が確保しにくいこと、さらに、研究者と対象者は教員と学生という影響力の高い立場であり、その倫理的配慮をするに当たり研究参加を募る方法が限られてしまうこと(今回、対象者を募る方法として、対象教育機関内に研究参加依頼のポスターを掲示し、それを見た対象者が直接研究者へ連絡を取るという方法を取った)が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策について、平成23年度の第1段階で得た課題(サンプル数が増えなかったことについての理由:(1)対象の教育機関が1校であったこと、(2)対象者選定基準である全領域の実習を終えた学生は4年生の後期に該当するため、従来の授業に追加して卒業研究や国家試験勉強等の個人的要因があり、研究へのインタビュー時間が確保しにくいこと、(3)研究者と対象者は教員と学生という影響力の高い立場であり、その倫理的配慮をするに当たり研究参加を募る方法が限られてしまうこと)から、平成24年度は、計画を修正し、サンプル数を増やし、質的手法を用いた分析を継続する。そこで得られた豊富なデータから看護学生の持つ倫理観の仮説的特質を明らかにし、次段階の量的調査へ移行してゆく。前年度の課題からの具体策としては、7名だったサンプル数を増やすべく、目標を更に20名に設定し、研究対象機関を増やし、より多くの対象者へアプローチしてゆく。研究対象者の個人的要因(前年度課題(2))から、全領域実習が終了する平成24年10月以降に研究公募を開始せざるを得ない状況の中、よりサンプル数を獲得すべく、研究対象機関内に掲示する研究参加公募ポスターは、連絡先をより見やすく明記する工夫を行う。さらに研究参加に伴う謝礼についても対象者が事前に周知しやすいようポスターへ明記してゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
具体的な研究費の使用計画を述べる。まず、研究対象機関は県外にも及ぶため、インタビュー募集に関わる書類の送付やポスター作成に関わる経費やインタビュー謝金、インタビュー実施への国内旅費が生じる。その経費に前年度繰り越し金を充てる予定である。研究対象者へのインタビューに伴い、逐語録の作成に関わる経費も加算される。さらに、研究全過程に渡り、国外の看護研究者にスーパーバイズを仰ぎ、質的手法の妥当性、解釈の確実性、考察への助言などについてアドバイスをもらい、さらに、第1段階の研究結果から第2段階での質問紙調査における質問紙作成に関わる助言ももらう予定である。それに関わる海外旅費も発生する。そして、スーパーバイズミーティングに用いる資料の英文校正費も生じる予定である。また、平成24年度の研究遂行に際し、文献複写費、文房具、スーパーバイズミーティングで用いる電子機器類(逐語録やデータ分析に関わる表、および質問紙作成に関わる資料を用いたディスカッションを必要とするためのノート型パソコンなど)の経費を必要とする。
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