本研究では水中運動指導者の予防的なスキンケアの開発を目指し、皮膚角層水分量、皮膚pH、経皮水分喪失量(TEWL)の測定およびマイクロスコープ画像を用いた形態の定量化を行うことで水中運動実施者の皮膚のバリア機能や性状の実態を明らかにすることを目的とし、水中運動後のケアとして皮膚のバリア機能の低下を予防できると予測される弱酸性水を連用し、その効果を検証した。 今年度は2名の水中運動指導者(女性2名、平均年齢は28.0歳)を対象に、水中運動実施後に毎回片方の前腕と下腿に1LのPH5.5の弱酸性水をかけ流す介入操作を1か月間行った。かけ流しを行う左前腕・下肢を介入群、右前腕・下肢を対照群とし、介入前後で、左右の前腕内側中央部と下腿膝蓋骨内側顆(以下、前腕と下腿とする)の角層水分量・皮膚pH・TEWLを測定した。前年度の調査結果同様、ベースラインにおいて、角層水分量は右前腕を除く前腕下腿とも10μSより低く乾燥状態であった(右前腕も10.8μSであり乾燥状態に近い値であった)。 TEWLは下腿に関しては正常より高い値であることからバリア機能が低下していることが明らかとなった。また、弱酸性水の連用による効果については、統計学的に有意な変化は認められなかったが、個人の変化に注目すると角層水分量の増加、TEWLの低下、皮膚pHの低下(酸性度の上昇)が確認できた。 マイクロスコープ画像を用いた形態の定量化については、個人差はあることを確認することはできたが画像が明瞭でなく定量化を行うことが困難であった。今後は定量化ができる画像処理について検討していく必要がある。
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