研究概要 |
本研究の目的は,腰痛発生リスクを伴うものが多い看護業務を対象に,看護技術動作が腰部へ及ぼす負荷量を定量的に測定し,結果を可視化して明示する手法を開発することである.看護・介護職の腰痛経験率は80%に上るといわれている(『毎日新聞』2008年2月18日朝刊「介護従事者:8割に腰痛経験 滋賀医大グループが全国調査」).実践している看護ケアの腰部負荷量を誰にでもわかりやすく明示することは,看護教育,看護実践場面で,腰部の負担軽減に対する意識を高め,最善の看護ケア方法を検討し提案することを可能にする.先行研究で示した腰部負荷に影響するひねり因子とその負荷量の関係をもとに,23年度は,日常行われているベッドから車椅子への移乗介助の主な3方法について,実施中の腰部のひねり角度と表面筋電図を測定して,そのデータをもとにひねり角速度,ひねり角加速度についても計算し,それぞれの筋負荷量の関係をグラフ化し対散布図を使って,3方法別腰部筋負荷の特徴を分かりやすく明示することを実現した. 24年度は,ベッドから車椅子への移乗介助に含まれる目的別の4動作((i)臥床患者をベッドの端に寄せる,(ii)臥位から座位への体位変換,(iii)座位から立位,車椅子への移乗,(iv)車椅子上での姿勢を整える)について,各動作ごとに,ひねり角度,ひねり角速度,ひねり角加速度とそれぞれの筋負荷量の関係を対散布図を用い,3方法による腰部負荷量の違いをより詳細に可視化し明示した.看護ケアの一連の動作を各動作に分けて分析・明示することにより,腰部負担の大きな動作を避け,より軽い方法を選び,適用,組み合わせることが可能となる.また他の看護技術に含まれる同様の動作姿勢についても腰部負荷に対する意識を高めることができる.今後,他の看護技術についても分析が必要である.本研究結果は国際会議(NI2012,モントリオール)で発表した.
|