2008年から経済連携協定(EPA)によりインドネシア人看護師が来日し、3年以内での看護師国家試験の合格をめざし、それぞれの受け入れ病院で看護補助者として就労・研修を行っている。しかし、この就労・研修については指針やモデルがなく、候補者のみならず受け入れ病院も戸惑いを感じ、負担が増大している。そこで、本研究では来日したインドネシア人看護師候補者の就労実態をとらえ、インドネシアの看護業務をふまえたうえで、候補者のインドネシアでのキャリアを活かすことができる就労支援ストラテジーを開発することを目的とした。 まず、インドネシアへ帰国した看護師候補者へインタビューし、日本での就労状況やその思いを明らかにした。次に、国内の受け入れ機関でフィールドワークし、実際の就労状況を把握した。 その結果、インドネシア人看護師候補者らは、看護補助者としての就労を看護業務だと捉えておらず、インドネシアで培った能力の低下といった危機感を感じていたことなどがわかった。そこには、日本では看護師しか行うことができない診療の補助業務を看護師の象徴的な仕事だと考えていることや、看護補助者として行う日々のケアでは、患者情報を得ずに決められたケアを決められた方法でルーチンとして行っている実態があること、看護師とのコミュニケーションの機会が限られ、協働している感覚が少なくなっていることなどが影響していると考えられた。 これらの結果から、インドネシア人看護師候補者の就労支援ストラテジーは、看護を実践しているという意識を高めることを中心にする必要があると考えた。看護補助者としてケアの実施範囲は限られており、臨床の状況によって限界はあるが、候補者が行っているケアの実施にあたり、患者の情報収集、アセスメント、ケア計画やその後の評価という一連の看護過程の展開に参画できるような就労支援ストラテジーを作成した。
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