最終年度では,老齢ラットについて実験を行った。老齢ラットの排尿リズムを代謝ケージにて測定した結果、測定前の飼育環境の違いによって老齢動物では特に個体差が大きかった.これまで測定した若齢,成熟齢との比較では,1日飲水量は若齢に比べ成熟齢と老齢で少なく,特に飼育前に複数飼育していた動物では顕著に飲水量が少なく体重比では有意差を認めた.1回尿量の平均は若齢に比べ成熟齢と老齢で有意に増加,1日総排尿量の平均は加齢とともに増加傾向にあったが,体重比ではいずれも各群間で有意差を認めなかった.排尿回数は若齢に比べ成熟齢と老齢では少ない傾向にあったが,有意差は認めなかった. 一方,摘出膀胱平滑筋短冊標本における収縮機能実験の結果,これまで行った若齢や成熟齢と比べても、老齢で収縮力の低下や過活動膀胱を示すような反応は確認できなかった。 以上の結果から,加齢により排尿量は有意に増加するが体重比で比較すると有意差を認めず,体重差によるものと考えられた.そして,排尿頻度は加齢によって頻尿ではなく,むしろ減少傾向となる可能性が示された.また,老齢では飼育環境によって排尿機能に関わる飲水量が大きく影響をうけており,単純な比較が難しい事が明らかとなった。つまり,老齢では飼育環境による個体差が大きいものの、加齢に伴い頻尿を呈する確率は低く,膀胱平滑筋自体の収縮力の低下や,過活動膀胱を示す所見も認めなかったため,加齢によって過活動膀胱傾向になる可能性は低いことが示唆された。
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