最終年度は、より安全で快適な点滴スタンドの操作方法の確立に向け、3次元動作分析と使用者の主観的評価をもとに、適切な点滴スタンドの操作位置を検証することを目的とし、歩行時の点滴スタンド操作位置に関する検証を行った。ディテクト製デジタル高速度カメラ・ハイスピードカメラHAS-L1を4台と動画撮影ソフトHAS-LI Basicにて撮影した動画は、3次元動作分析ソフトDipp-Motion PROを用いてデータ解析を実施した。 健康な成人男性30名(平均年齢20.9歳SD1.28)を対象に、点滴スタンド操作位置による歩行を比較するため、模擬点滴を左腕に装着し、動作分析および主観的評価を実施した。点滴スタンド操作位置は“前方”“斜め前”“側方”のそれぞれ左右で計6箇所とした。対象者の基本属性(年齢、性別、身長、体重)や歩容(歩行速度、歩幅、歩隔、腕の振り、体幹の前傾角度、重心位置、点滴スタンドと体幹の距離)に関するデータ収集を行った。また、主観的評価では点滴スタンドのa操作のしやすさ、b歩行のしやすさ、c上肢の負担感、d腰部の負担感、e下肢の負担感について比較してもらい、その他の感想とともに聞き取りを行った。歩幅と腕振り角度の狭小化が“前方”での操作位置でみられた。“右側方”での操作位置において最も体幹が前傾していた。主観評価では左右ともに“斜め前方”が全項目において得点が高く、安全で快適に点滴スタンドを使用できる操作位置であることが示唆された。
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