研究課題/領域番号 |
23792562
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
新井 直子 帝京大学, 医療技術学部, 講師 (10432303)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 褥瘡 / アセスメント / MMP / BMP |
研究概要 |
本研究の目的は、褥瘡の予後予測を行うためのアセスメントツール開発に向けた基礎的研究を行うことであり、アセスメントに生体高分子マーカーの活用を目指す。 今年度は、研究協力者のリクルートを行いながらサンプルの作成および解析を進めた。研究協力者から採取した創傷液からタンパク質およびRNA抽出を行い、RNAはcDNA合成後に研究者のこれまでの研究成果を参考にターゲットを定め、リアルタイムPCRを行った。その結果、リアルタイムPCRによりTGF-βスーパーファミリーである骨形成因子(BMP) -6の存在を認めた。このことは、褥瘡の創傷液中にはBMP-6が存在し、創傷治癒に何らかの役割を果たしている可能性があることを示唆している。これまで創傷治癒にはBMP-2などが関与していることがいわれているが、BMP-6については明確に示されておらず、褥瘡への関与については検討されていない。そのため、本研究の結果は、褥瘡治癒に関する新たな知見を見出すこととなると同時に、創傷治癒マーカーとなる可能性も十分に考えられる。一方、タンパク質サンプルに対しては、マトリックス分解酵素(MMP)ファミリーをターゲットとしたウエスタンブロティング法での半定量を行い、MMP-9および13が創部の検体採取部位および採取した日により検出量が異なる、つまり創の状態により分泌されている量が異なることを確認した。この結果は、ひとつの創部においても多様性があることを示すとともに、創内の場所および創傷治癒過程の状況によってもその量が変化することを示しており、MMP-9および13が創部アセスメントツールとして有用となる可能性を示唆している。 以上のことから、今年度の成果によって、褥瘡治癒過程における創部の状態に対するアセスメントツールとして、生体高分子マーカーの使用が可能かつ有用であることを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ウエスタンブロッティング法による実験条件の設定に時間がかかっているため、データを得ることが予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度 今年度に実施している研究協力者のリクルートは継続し、十分な対象数を確保するよう努める。 平成23年度の研究結果から得られた対象タンパクの半定量分析を継続しながら、半定量の結果を創状態と照合し、経時的な変化と創状態との関連についての傾向を分析する。また、市販のキットを用いて、活性型のMMP-9およびMMP-13を定量的に分析し、半定量的分析で見出した傾向を基に分析を進め、治癒に移行していると判断できる(もしくは治癒遅延に移行していると判断できる)濃度のカットオフポイントを検討する。 同時に、サンプル解析対象を、RNAレベルタンパク質レベル共にMMPおよびBMPスーパーファミリーの他に、これらと関連するタンパク質まで広げる。上記を実施しながら、アセスメントツールとしてより有用な対象を見極めていく。平成25年度 24年度の酵素免疫測定法等の結果を基に、新たな対象者をリクルートし、高分子マーカー量による創部の判定と臨床判断の整合性を検証する。また、平成23年度および24年度に新たな分子の関与を認めた際は、確認のための追加実験を行う。褥瘡創部のアセスメントに最適なタンパク質を確定させた後は、実際の臨床現場に活用するための確認実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
タンパク質およびRNAの解析に必要な試薬類に研究費の8割程度を使用し、サンプル採取等に必要な旅費と研究成果の発表に必要な経費に研究費の約2割を使用する。
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