研究課題/領域番号 |
23792562
|
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
新井 直子 帝京大学, 医療技術学部, 講師 (10432303)
|
キーワード | 褥瘡 / アセスメント / MMP / BMP |
研究概要 |
本研究の目的は、褥瘡創部のアセスメントツール開発に向けた基礎的研究を行うことであり、アセスメントに生体高分子マーカーの活用を目指す。 今年度は、研究協力者のリクルートを継続しながら、昨年度の研究結果を参考にサンプルの作成および解析を進めた。研究協力者から採取(創傷治癒の状態別に3か所採取)した創傷液からタンパク質およびRNA抽出を行い、昨年度のリアルタイムPCRで確認したTGF-βスーパーファミリーである骨形成因子(BMP) -6について、ウエスタンブロッティング法を用いてタンパクレベルでの解析を進めた。また、これまでの研究結果より、褥瘡の発生や治癒に関与すると考えられるマトリックス分解酵素(MMP)ファミリーであるMMP-9に関しても同様に解析を行った。 その結果、治癒が遅延している創部(または個所)では、MMP-9、BMP-6が共に高いレベルで検出される傾向にあった。また、創傷治癒が促進されている創部(または個所)では、MMP-9が高いレベルかつBMP-6が低~中程度のレベルの傾向にあり、MMP-9、BMP-6が共に低いレベルの場合は、創傷治癒の最終段階である表皮形成が促進されている傾向にあった。このことは、MMP-9およびBMP-6のタンパク質濃度を測定することで、創部の状態を判断できる可能性を示していると考える。BMP-6と褥瘡の治癒との関連性はこれまでに検討されていないため、本研究の結果は、褥瘡治癒に関する新たな知見を見出すこととなると同時に、BMP-6とMMP-9が創傷治癒マーカーとなる得る可能性を示すことができたと考える。 以上のことから、今年度の成果によって、褥瘡治癒過程における創部の状態に対するアセスメントツールとして、生体高分子マーカーの使用が可能かつ有用であることを示すことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度実施予定であったウエスタンブロッティング法による実験条件の設定に時間がかかった影響により、本年度では半定量による傾向分析にとどまったため。
|
今後の研究の推進方策 |
半定量的分析で見出した傾向を基に定量的な分析を進める。 また、褥瘡創部のアセスメントに最適なタンパク質を確定させた後は、実際の臨床現場に活用可能かについて、検証研究を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
酵素免疫測定法(ELISA)のキットを用いて、活性型のMMP-9およびMMP-13、BMP-6を定量的に分析し、半定量的分析で見出した傾向を基に分析を進め、治癒に移行していると判断できる(もしくは治癒遅延に移行していると判断できる)濃度のカットオフポイントを求める。 また、酵素免疫測定法等の結果を基に、高分子マーカー量による創部の判定と臨床判断の整合性を検証する。
|