本研究の目的は、褥瘡の治癒過程における客観的創部アセスメントツールの開発に向け、創部の質的な評価に生体高分子の活用を検討することである。助成前半に採取した検体を用いたタンパク質の分析を進め、平成27年度には、褥瘡の浸出液中に存在するマトリックス分解酵素であるmatrix metalloprotease-9(MMP-9)および骨形成因子として知られているbone morphogenetic protein-6 (BMP-6)の検出量と、褥瘡創部の評価ツールであるDESIGN-Rの各項目の評価との関連性について明らかにした。 今年度は、DESIGN-Rにおける評価を軽度と重度という2つの分け方(重症度別)で比較し、創底部の深さの項目及び創縁部のポケットの項目はそれぞれの生体分子の検出量による軽度・重度の判断が可能であることを明らかにした。27年度及び28年度の結果から、MMP-9およびBMP-6は褥瘡創部の状態を客観的に判断するために有効な高分子マーカーであり、DESIGN-Rの評価および重症度を客観的にアセスメントするツールとしても活用が可能であるといえる。 また、定量的な分析をすすめるにあたり、計画の段階で採用した手法では条件設定が整わなく難渋したため、新たな方法での定量を試みた。その結果、MMP-9以外のMMP類が創部アセスメントの活用できる可能性も確認できた。
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