研究課題/領域番号 |
23792563
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
加藤 京里 東京女子医科大学, 看護学部, 講師 (70385467)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 温罨法 / 快 / RCT |
研究概要 |
入院患者60名(各群30名)を対象者とし、後頚部温罨法の介入評価研究を行った。本研究はランダム化比較試験である。60名の患者は、乱数表にて2群にランダムに割り付けられた。温罨法群は後頚部に約40℃の蒸気温熱シートを、コントロール群は非温熱シートを10分間貼用し、連続3日間、15時~17時に実施した。結果、研究対象者は、脱落を除き温罨法群27名、コントロール群25名となった。2群の対象者特性に有意な差はなかった。対象者52名の年齢は68.7±13.8歳であった。「生理学的指標」については、温罨法群の前後の群内比較で手掌皮膚温(p=.004)、足底皮膚温(p=.024)が上昇し、鼓膜温(p=.033)は低下した。コントロール群は、唾液アミラーゼが低下(p=.008)したが、4指標共に2群間には有意差が認めらなかった。「主観的気持ちよさ」に関する質問紙結果については、因子分析(主因子法)の後、尺度得点を算出し2群で比較した。『温罨法中の快(p=.000)』と『活力の向上(p=.005)』について温罨法群が有意に高かった。「生活しやすさ」は、温罨法群は『明日も頑張ろう(p=.019)』という前向きな気持ちが有意に高く、また3日目の『主観的睡眠時間(p=.007)』が有意に長かった。以上を基に共分散構造分析で後頚部温罨法中の快がもたらす効果モデルを作成し、良い適合度が得られた(CFI=.972,RMSEA=.034)。後頚部温罨法中の快がもたらす効果については、以下の2つのプロセスが明らかになった。(a)後頚部温罨法の『温罨法中の快』は『手足があたたかい』感じを与え、『主観的睡眠時間』を増加させることで『自覚症状を軽減』させる。また(b)後頚部温罨法の『温罨法中の快』に続く『活力の向上』が『気持ちの安定』につながった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の初年度においては、第一段階として、入院患者に対する後頚部温罨法の効果を明らかにし、指標間の関連について共分散構造分析を用いて効果モデルを開発することとした。これらの結果より、患者の健康回復に向けた援助において、温熱を用いた看護技術が与える気持ちよさが重要であることが示された。この進捗状況としては計画通りである。次年度以降は、得られた結果をもとに尺度開発に向けていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
「研究結果の還元」平成24年度の前半期には、平成23年度の研究結果を国際学会で発表するとともに、論文として国際誌に投稿すべく準備をしている。学会発表は、査読を受け結果待ちである。論文については徐々に書き進めている。「今後の研究推進」平成24年度の前半期には、尺度開発に向けたアンケート調査の研究計画書を完成させる。研究計画が完成後、所属機関の倫理委員会で承認を得る。承認が得られ次第、H25年度に本調査を実施できるよう、H24年度内に予備調査を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
「研究結果の還元」H23年度内の学会で研究結果を発表する良い機会が得られず、学会発表に関する支出をH24年度に移行して使用する予定である。英語での学会発表、論文投稿のために、英文校正料金等の専門的支援に対して補助金を使用する。また、学会発表のための旅費が必要である。「尺度開発」初年度の結果から試作版尺度を作成し、予備調査を実施する。尺度の信頼性、妥当性を確認して本調査を実施する。アンケート調査においては、質問紙の作成と郵送、返送のための印刷費と郵便料金が必要である。膨大な量のアンケート結果はデータ処理業者に依頼して整理する。
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